期待度♪♪♪♪
大千秋楽に向けて
再演を滅多にやらない(『12人の優しい日本人』『君となら』『笑の大学』くらいだろうか)三谷幸喜が、もはや「三谷組」と呼んでも構わない相性のよさを見せている戸田恵子と組んで、再度ミヤコ蝶々の一代記に挑む『なにわバタフライN.V.(ニューバージョン)』。初演は、戸田が朝日舞台芸術賞秋元松代賞、読売演劇大賞最優秀主演女優賞を得るという高い評価を得た。
声優としてのイメージが強い戸田だが、元々は歌手であり、劇団薔薇座を中心に活躍していたミュージカル女優である。舞台こそがその本領であることを、この公演ではっきりと証明してみせた。
今回はその再々演。しかも全国九都市を巡るロングラン公演で、その大千秋楽が、ミヤコ蝶々との縁も深い嘉穂劇場。大衆演劇のメッカであり、長らく小劇場の枠から飛び出せなかった三谷幸喜が、近年とみに「次の井上ひさし」を目指して「商業演劇化」を図っている過程の道標として、最も相応しい舞台を選んだと言うべきだろう。
とは言え、私が一番関心を惹かれているのは、「戸田恵子がいかにミヤコ蝶々を演じるか」という点である。蝶々さんが亡くなってもう十数年。晩年は関西ローカルの番組にしか出演しなくなっていたから、親しみを感じる世代は40代より上だろう。今すぐにその姿を観たいと思えば、ビデオレンタルで『続・男はつらいよ』を借りて、寅さんの母親を演じているのを確認するくらいしか手がないのではないか。
戸田恵子の「旬の演技」が、「ミヤコ蝶々って、凄い喜劇人がいたんだよ」と次の世代に送り伝えるものになっていれば嬉しい。