3Abschied ドライアップシート 公演情報 3Abschied ドライアップシート 」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.0
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  • 満足度★★★★

    実験的
    いわゆるダンス公演とはかなり毛色の異なるドキュメンタリー的な構成で、コンセプチュアルで刺激的な作品でした。

    マーラーの交響曲『大地の歌』の終楽章『告別』をCDで流し、この曲で踊ることになった経緯をアンヌ・テレサ・ドゥ・ケースマイケルさんが語り、最初から30分ほどはまったくダンスも演奏もありません。

    (別れNo.1)
    その後、いよいよアンサンブルとメゾソプラノによる生演奏に合わせて踊るのですが(ムーブメント自体はいかにもローザス的なしなやかなものでした)、終盤は音楽に見合うダンスが見つからず、踊ることを止めてうずくまってしまいます。

    (別れNo.2)
    そこでジェローム・ベルさんがおもむろに客席から現れ、終わり方を変えることを提案し、実演します。
    1つの案は同じ『告別』というタイトルのハイドンの交響曲(終盤に奏者が一人ずつ席を去っていく指示があります)に倣って、途中からどんどん奏者が帰っていく方法。もちろんマーラーの『告別』はそのような演出を前提にした曲ではないので、スカスカな音響になっていきます。
    2つ目の案は歌詞が死別を扱っているので、立ち去るのではなく、その場で死ぬふりをする方法。それまでシリアスだった雰囲気がバタバタ倒れていく音楽家たちの姿で一気にスラップスティックなものになりました。言及はありませんでしたが、カーゲルの『フィナーレ』(指揮者が倒れて担架で運ばれる曲です)に倣ったのだと思います。
    この間もケースマイケルさんは踊りませんでした。

    (別れNo.3)
    そして最後にたどり着いた方法は、アンサンブルの演奏をやめて、ピアノ1台だけで演奏し、ケースマイケルさん自身が歌いながら踊るというもの。椅子と譜面台だけが残っている広い空間の中を弱々しく歌いながら踊る姿はとても訴え掛けてくるものがありました。
    曲が終わり、ダンスも終わるかと思いきや、舞台奥のかすかに姿が見える薄暗がりの中、無音で祈るようなダンスが続き、最後はステージの一番手前で別れを覚悟したかのように数分間客席を見つめ続けました。そして舞台上に設置された照明卓を自ら操作して暗転して、全てのパフォーマンスが終了しました。

    型破りな構成、そっけない照明、上演時間の半分程度の時間しか踊らないことなど、ローザス的な作品を期待していると幻滅するかもしれません(実際、ダンス公演には珍しくブーイングが出ていました)。

    個人的にも、もっとバリバリ踊る姿を観たかったのですが、敢えて今までの作風を封じて舞台芸術や別れについての思索を舞台に上げ、観客に問いかけをするチャレンジ精神を素晴らしく感じました。

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