満足度★★★★★
奇跡の出来栄え
終演後、圧巻の出来にしばらく席から立てませんでした。これまでのところ今年のNO.1舞台候補です。外国の戯曲ですが、これほど現代社会とそこに生きる人を描き切った作品はそうお目にかかれないのではないでしょうか。チラシ表面などに掲載のキャッチコピーが素敵。そう、考えるべきはやはり、「私の人生」なんだよなと。魂が震える芝居でした。
満足度★★★★★
無断欠勤し家族にも知らせず家を出たハーパーの旅.現代イギリスの社会問題やインターネット問題を反映して描く.
これもまた財政難から観劇を迷った1本でしたが、観て良かった!大正解!
迷った理由は地味なテーマと暗くて難しそうな長塚作品というイメージ。
それでも観たのは、「エレンディア」以来、一方的に役者根性が凄いだろうと思っている美波、芸達者な木野花、全面的に信頼できる山崎一・大河内浩という魅力的な配役。
2006年のイギリスが舞台。
父親の危篤の知らせに、夫や娘にも知らせず、無断欠勤して帰省した40代の女性ハーパー・リーガンの2日間の旅。
旅で出会った見ず知らずの人間たち、そして母親、義理の父らと関わったことで、家族のもとに帰った彼女も、家族も、何かが変わり始めた。
出会った人々は、皆、問題を抱えている。
現代なら普通のことかもしれないけれど。
人間はいびつだけれど生きていく。
下手をすると、ただの主婦の2日間の自分探しのささやかな冒険の旅。
悪いことをしたのを自慢げに話す、ありきたりな話の一面もありながら、今の社会のさまざまな問題が背景にあるために、それだけにはなっていない。
インターネットや、音楽プレーヤーが、少しずつ人間性を失わせつつあることも盛り込みながら。
小林聡美のキャラクターの優しさが、主役のハーパーにもにじみ出ていて、自然と親近感が湧きます。
そして、美波、うまい。まさにその場で感情が動いているように。
当然のことながら、出番が短いのに、木野花もうまい。
「今にして思えば、これから人生がスタートすると思っていた、その時こそが人生だったのだと。」
この母娘三代が、合わせ鏡のようにお互いに反映されているのが面白い。
ラスト・シーンも受け止め方は人によって違うかもしれないけれど、私にはほほえましく希望を感じました。
蛇足ですが、オールモノクロで統一されたパンフレットの内容は、演出者・俳優インタビューから複数の専門家の寄稿まで非常に面白くて充実の一冊。
これで1200円なら納得。
製本・閉じ方までもが凝っていて、うれしい。
満足度★★★★★
しみじみおもしろい
演出と音楽の感じがなんともかっこよかった。そして主人公の女性に対して、自分の今と状況は違うのだけど、やはり共感してしまう。彼女に光が見えたことによって、自分に光が射したかのように感じた。いつも見ているお芝居とは違う感動や共感がありました。
満足度★★★★
長塚演出の新境地を観た
とても、新鮮な演出でした。
アカデミー賞外国映画賞候補になるような味わいのある作品でした。
小林聡美さんも良かったけれど、今回もまた、山崎さんの深い演技表現力に魅了されっぱなしでした。
家族の愛情や感情のもつれは、万国共通のテーマなんだなと、痛感!
ネタバレは、後日追記するかもしれません。
満足度★★★★
認め合う
端的にいうと、母娘三代の衝突、そこに血を分けた人達でありながら
容易には埋められない「壁」を感じつつも、
本気で本音をぶつけ合う事でうっすらと見えてくる共通点に少し安堵し
最後には互いを、ほんの数センチだけど確かに「認め合う」。
そんな、微かに希望がのぞけるような、観終わった後には色々なことへの
ためらいがしゅんと消えていくような懐の広い劇でした。
ネタバレに書きますが、公演前のインタビューで小林さんが言及していた
最後のシーン、あそこはホントに良いね。 結構響いた。
話全体は女性にささげられているものと感じたけど、最後の場面は
男はじんとするんじゃないかと思う。