満足度★★★★
鑑賞日2017/11/26 (日) 13:00
安部公房の戯曲は初見。初期戯曲だが、人間の本質的な業の深さをいろんな要素から抉ってくる。誰にだって分かるタブーだって、人は当事者となると簡単に踏み越えてしまう。かめりさ演じる女房の自分勝手で我儘だけど、愛情や幸せをただ真っ直ぐに求める姿には、ある意味救われたな。
満足度★★★★
昨年5月の「楽屋フェス」参加で始動した後もコンスタントに公演を打ち、趣向の異なる公演四種を繰り出した後の安部公房作品舞台第二弾。前回の「どれい狩り(ウェー)」に続く50年代の安部作品を、小劇場(というより狭小劇場)で観る貴重な機会だ。
「制服」上演は65分。以前戯曲を読んだ時はもっと複雑に感じたが、舞台化してみれば・・というのも変だがコンパクトかつシンプルな舞台になっていた。このところ自分は別役づいているが「制服」にも別役実を彷彿とさせる台詞があった。もっとも別役の戯曲執筆は60年代以降で、後輩になる。共に満州からの引揚げ者で、異国語の如く日本語を用いる独特な筆致、という共通点を見出して括ることは可能ではないかと個人的には感じているが、不条理性を持つ安部の渇いた劇世界が別役の代名詞「不条理劇」の先行形態としてあった、と見る事もできるかも知れない。
ただ、安部戯曲は別役が小劇場向けのテキストであるのに比してまだ新劇の文脈の延長にあり、大劇場向きの「大状況」を叙述する要素がある。それを(経済事情もあるのだろうが)space雑遊や今回のひつじ座などの狭い劇場で上演するさんらんの作品解釈的な狙いは何か・・。そんなハテナを燻らせながら会場へ赴いた。
舞台化された「制服」は喜劇であった。はっきり「喜劇」へと舵を切る瞬間は劇の終盤であるが、前半よりその伏線はあり、人間の哀れをドライに、カラッと揚げて別役的に収めたのが今回の演出の方向性と理解した。
ただ、この作品の大状況(敗戦直前の朝鮮半島に住む日本人たち)は、他の設定と代替可能なシチュエーションではない。もっとも作者的には、太平洋戦争末期の植民地下朝鮮という設定は「事件」を多角的に照らす絶好の舞台設定だ、という事であり、権力・差別構造の上に、強烈な個々の人間の境遇や性質が絡んで、必ずしも被害と加害といった単一のテーマに収斂されない複雑な様相が描き出されている、という意味で、この劇は当時のステロタイプへの「アンチ」として提示されたものとも推察できる。・・のではあるが、(作家が不謹慎であるべきでない、というのでなく)「大状況」の事実性が立ち昇らせるテーマ性からは逃れられないのも確かな事で、事実その要素はドラマに書きこまれている。
一方、現在の日本ではステロタイプそれ自体が既に溶解し、戯曲を新鮮に読むことができる反面、暗に想定されている背景色を捉え損なうと、新鮮味を生むか、戯曲の魅力を失うか、微妙である。評価しづらかった前回の「奴隷狩り」にはその微妙さを感じたが、今回は短編でもあり、渇いた喜劇性をオチとしたのは(終わり良ければ何とやら)、正解だった。問題はその喜劇性とテーマ性との両立、それが今安部作品を上演する際の課題だと思えるのは、新劇テイストの残るテキストゆえだろうか。
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円城塔さんは安部公房とは逆の方向にいってほしい
7年弱前
「死を遅らせるために、死を早めているのが、文明という預金通帳のやりくりでしょう」 安部公房 『カンガルー・ノート』
7年弱前
僕の場合ろくに日本文学を読んでなかったから安部公房文学にのめり込めたのかな
7年弱前
あれだよね、殺さない安部公房の友達みたいでもあったよね。ちょっと違うか。核心はずれてるけど、家族が乗っ取っていくとこ。
7年弱前
キルケゴールと安部公房と鳥居みゆきと出雲大社がぶつかると哲学ハイになる
7年弱前
あーーーすっごい面白かった!ナイロン~!本公演ー!休憩までは別役実というか安部公房というかゴドーというかーあー!好き、ってほくほくしながら積み上がるものを楽しく見てたけど後半めっちゃケラさんーって積み上がけたものがバラバラ崩れて欠片になってそれを拾って、幕が切れて、あー!好きー!
7年弱前
@akivenus 安部公房ね!砂の女とか衝撃だったな 谷崎もいれるか悩んだ~ アキ先輩わりと幅広いね!!
7年弱前
@kikipokku 読んでみますわね🤗 安部公房に影響を与えた、カフカの作品も読んでみたいですわ。
7年弱前
@kikipokku 安部公房、家に本があるけど、きちんと読んだことありませんわねぇ🤔
7年弱前
京都新聞 11月29日朝刊、円城塔の文学散歩・安部公房「砂の女」 自由は必ずしも楽しくも無いことを知った我々は、それでもなお自由へと逃れるのか、自由から逃れようとしているのか。安住や癒しの地はむしろ不自由の中にあるのかもしれず……… https://t.co/fyxDU5X8js
7年弱前
安部公房の「砂の女」って、 山形県の庄内砂丘がモデルなんやって。 行ってみたい❗️ちゃんと帰れるなら!
7年弱前
走り続けたが 追いつけなかった人々の 贋のゴール 旗は振られ 審判も観客も とうに引揚げてしまった 夜の競技場 -安部公房『箱男』
7年弱前
道にこだわりすぎるものは、かえって道を見失う。-安部 公房-
7年弱前
彼女が、もし、本気でぼくを知りつくそうとしてくれるなら……昨夜、贋箱男に見せたような姿勢で、ぼくを受止めてくれるつもりなら……たしかにもう箱なんか無くてもいい。隠す醜さを持たない人間には、他人の醜さだって見えないはずだろう。『箱男』安部公房
7年弱前
安部公房好き
7年弱前
ふあゆ、安部公房みある
7年弱前
〈八幡の藪知らず〉という言葉を知ったのは安部公房の『榎本武揚』で、読んでる時にちょくちょく出てきた。禁足地、神隠しの森として知られた千葉県市川市八幡の森。慣用句としては 「道に迷う」「出口が分からぬ」という意味だとか。
7年弱前
安部公房「清掃車に、こうプレスしてさ、ゴミを積んでいく車があるじゃない……あんな感じがする。するんだけれども、彼(ヘンリー・ミラー)はその行為に対してほとんど信頼を寄せてない気がする。不信が(言語で世界を埋める)手を休ませない」
7年弱前
私も、安部公房の『箱男』との出会いは決定的だったなあ……。 図書館に行ったこともなくて、待ち合わせのために仕方なく行って、手持ち無沙汰で、「あ」のところの作家の本を手にとって、別次元に吹っ飛ばされた。「あ」じゃなかったら、出会わな… https://t.co/rqoKbKhLpA
7年弱前
安部公房さんの「壁」読み直そう。むかーし昔ハマってたんだ。「燃えつきた地図」やら「カーブの向う・ユープケッチャ」が好きだった。もう文庫本はキッチリ黄ばんでた。Momat常設展がらみ。
7年弱前
読みかけの小説リスト ・無関係な死・時の崖(安部公房) ・眩暈(島田荘司) ・その女アレックス(ルメートル) ・白痴(下)(ドストエフスキー) ・狼と香辛料7 10日あれば読み終わる......ドストエフスキー除く。重いぃ
7年弱前
血が凍り、凍った血が心臓に流れついて、赤いハート型の氷嚢になる。 『燃えつきた地図/安部公房』
7年弱前
っていうか安部公房をもっと読みたい
7年弱前
安部公房がピンク・フロイドのファンだった、ということで、鷺沢文香さんがピンク・フロイドを聴いているという風に、なんとかなりませんかね。そこをなんとか
7年弱前
「もっとも、信じている者にとっては、時間はいつだって束の間にすぎませんがね。それが、何年になろうと、何十年にわたろうと……」――『人間そっくり』安部公房 新潮文庫
7年弱前
片道切符とは、昨日と今日が、今日と明日が、つながりをなくして、ばらばらになってしまった生活だ。そんな、傷だらけの片道切符を鼻歌まじりにしたりできるのは、いずれがっちり、往復切符を手にした人間だけに決まっている。(砂の女/安部公房)
7年弱前
おれは家と家との間の狭い割れ目をゆっくりと歩きつづける。街中こんなに沢山の家が並んでいるのに、おれの家が一軒もないのは何故だろう?……と、何万遍かの疑問を、また繰り返しながら。 -安部公房『赤い繭』
7年弱前
あらゆる場所を覗いてまわりたいが、かと言って、世間を穴だらけにするわけにもいかず、そこで思いついた携帯用の穴が箱だったのかもしれない。逃げたがってるような気もするし、追いかけたがっているような気もする。どちらなのだろう… -安部公房『箱男』
7年弱前
僕のなかでカフカの占める比重は、年々大きくなっていきます。信じられないほど現実を透視した作家です。……カフカはつねに僕をつまずきから救ってくれる水先案内人です。 (安部公房『死に急ぐ鯨たち』新潮社)
7年弱前
価値がないことは分かっていても、ガラスの中で屈折してきた光には不思議な魅力があるものだ。思い掛けなく、別な時間を覗き込んだような気分にさせられる。/安部公房『箱男』https://t.co/E5feUXcqip
7年弱前
チェスタトン-ブラウン神父物語 安部公房-箱男 クリストフ-悪童日記 北村薫-空飛ぶ馬 綾辻行人-時計館の殺人 京極夏彦-魍魎の匣 あさのあつこ-バッテリー 西澤保彦-七回死んだ男 歌野晶午-葉桜の季節… https://t.co/6qs1b8XpHM #名刺代わりの小説10選
7年弱前
「他人の顔」〔66.勅使河原プロ=東京映画.監督.勅使河原宏 脚本.安部公房〕 1.医者「君だけが孤独なんじゃない。自由はいつだって孤独なんだ」
7年弱前
夜になると取り残されたものの焦燥が夢になってあらわれた。虫になって地図のうえをさまよう夢や、切符なしに行先のない汽車にのっていく夢などをみた 『けものたちは故郷をめざす』安部公房
7年弱前
今安部公房の『砂の女』と中村文則の『あなたが消えた夜に』を読んでるけど 両方とも第1部がちょうど終わったところだけど 早く続きを読みたいのはあなたが消えた夜にの方だよ。 安部公房の他の作品も面白そうだから戯曲を除いたほぼ全作品読む事になりそう。
7年弱前
【次回公演】 『未必の故意』 作/安部公房 12月15~17日(全4公演) @神戸/元町プチシアター 前売2,400円(中高生半額) 詳細は→https://t.co/veC7wZmhjz 「江口の死は、ずっと前から計画されとったんよ…」 #劇団風斜
7年弱前
箱は、別世界への出口。一度かぶったらやめられない。見るが愛。見られるは憎悪。恋はあまりにも無垢だった。文学史上、最も先鋭なる前衛官能小説!!いったい誰が箱男ではなかったのか?誰が箱男になりそこなったのか?/安部公房『箱男』https://t.co/Ma6voXgzT3
7年弱前
〈選ぶ道がなければ、迷うこともない。私は嫌になるほど自由だった〉安部公房の『笑う月』‘’鞄‘’の章…自由とは何か。
7年弱前
演劇軍団ユニットCongrazie act17 「友達」作/安部公房 演出/辻まこと 12月16日15時〜19時〜 17日14時〜18時〜 場所 IKSALON表現者工房 https://t.co/0OyC1RkOXa https://t.co/zCkpfVZmtU
7年弱前
確か私も安部公房は高校の時の国語の教科書の評論文『蛇について』しか読んだ事がない。しかもそんなのを覚えているのは当時の国語教師のインパクトが強すぎた故であったりするので、いつか時間が出来たら何かしら読まねばとは思っています、はい。
7年弱前
確か私も安部公房は高校の時の国語の教科書の評論文『蛇について』しか読んだ事がない。しかもそんなのを覚えているのは当時の国語教師のインパクトが強すぎた故であったりするので、いつか時間が出来たら何かしら読まねばとは思っています、はい。
7年弱前
@aranya0822 安部公房最高だね! みうらじゅんがポツンとあるのも個人的にポイント笑
7年弱前
暇ならこれ読んでみ「砂の女」安部公房/新潮社
7年弱前
「停止した死は不死だよ」 安部公房 『バベルの塔』
7年弱前
これが勅使河原宏安部公房が「他人の顔」で顔のおおやけどを扱った点が安倍首相に収斂されてデッドエンドだったのと局面が変わる意味を孕んでいるわけですね。ただの感じがいいだけではこの生死境界がうまく入らず抽象的に三島的に日の丸でも設けて空転する点が解消。
7年弱前
@t_hotta お二人でいらしてくださって、ありがとうございました!とても嬉しかったです。ホッタさんなら何を選ばれるか、とても気になるところです。あげておられる三作品、私は知らないものばかりです。安部公房は読んでいるはずですが、記憶に……。
7年弱前