帝都天籟 公演情報 帝都天籟」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 2.7
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  • 満足度★★★

    明治20年代の帝都にある陸軍御用達の館…ここに男3人が集まり1人の女性を巡っての回想劇といったところ。説明によれば「陶酔と崇拝、高揚と快楽、そして惨劇。誰が最も彼女を愛しているのか。」というサスペンス風な仕上げ方になっている。
    もっとも男3人は、道化・兵士・狂人というイメージを持ち、それらの人物を投影して観る女性像が鮮明にならなかったのが残念である。

    本公演は、この劇団(慶応義塾大学の卒業生及び現役生の有志団体)の旗揚げ公演である。脚本は手堅く、演出は巧み、演技も安定・バランスも良い、という好印象であるが、中心に入(要)るはずの愛されている女性が暈けてしまったように思う。その意味で物語の世界観自体も曖昧になり、テーマとして据えた不条理が観えてこなかったのが残念。それでも力強さはあり、今後の公演が楽しみである。
    (上演時間1時間30分)

    ネタバレBOX

    舞台セットは、上手側に背凭れが段通様の椅子2脚とミニテーブル。下手側に同じような段通様のソファーが置かれ、瀟洒な居間という感じである。

    梗概…館が焼失し遺体が見つかった。そこでの出来事を記事にするため、帝国編集記者・雨森咲子(井田愛実子サン)が生き残って収監されている男・四阿喜一(宇都宮志保サン)に面会に来て尋ねるシーンから始まる。先に記した1人の女を介した3人の男による回想。そこで描かれる危うい人間関係、サスペンス風で一触即発の室内劇はスリリングであった。何より個人の回想が、国家的な思惑へ変質し、たたみ掛けるようなテンポが自分には心地良かった。

    3人の男は、劇作家=道化(ストーリーテラー役でもあるような)、陸軍大佐=軍人、商人=狂人という役回りのようで、それぞれが女との出会い関わりを話し出す。そこには色々な形の愛情が表現される。道化は、新時代を演劇に準(なぞら)えた視点、軍人は戦争における女(軍)神として崇拝する視点、狂人は生活と自我(アヘン中毒)の破綻という視点から見つめている。端的に言えば、女は精・神・肉の象徴のようである。そこに「近代国家」へのアイロニーが見えてくる。一方、女の視点はどこにあるのか。帝都の男たちの視座が強調されているが、清国の女という視座は皆無に等しい。出来れば男たちの視点を通じて女の存在、その役目の理不尽さ、国家に翻弄される哀しさが見えると良かった。

    冒頭、中盤で発せられる記者の台詞「ストレッチでもしませんか?」は観客に向かって笑いを誘うもの。手堅いような演出にも遊び心が窺える。
    演技も熱演であり盛り上げ方も上手く、当日パンフに主宰の松岡大貴氏が「あなたに、ステキな騙まし討ちがありますようー。」とあった。そのラストは幕引きに相応しく印象的なもの。

    繰り返しになるが、清国スパイという役割を担わされた花琳・ホアリン(三井賀央里サン)の悲哀と理不尽さ、その大いなる不条理が帝都(日本)と清国の両方の視座から観えたならば…その意味で勿体無いと思える公演であった。
    なお、大佐が花琳をミューズに見立てて、平和への希求を激白する、そのシーンはさながら歌舞伎の観得を切り主張を強調したかったと思うが、自分にはあざといと思えるような…。

    最後に明治時代という時代状況があまり感じられないこと、それは衣装なども影響している。雰囲気を出そうと努めているが、何となく中途半端。物語に訴求する力があれば、そんなことは卑小なことだが…。

    次回公演を楽しみにしております。
  • 満足度

    うーん、残念。

  • 満足度★★★★

    同じ女性を狂おしいほどに愛した3人の男性。
    3人それぞれが彼女と過ごした激動の日々の中に、様々な謎や矛盾が浮かび上がってきます。
    昔、十朱幸代主演で舞台化された「悪女について」を彷彿させ、ストーリーの行方に目が離せません。
    男女のドロドロ劇の枠を超えた顛末もダイナミックで面白かったです。
    熱い芝居を自認するだけに劇場の大きさを遥かに超えたエネルギーが炸裂していました。
    欲を言えばもう少しゆるーい場面も設けて抑揚があった方が、終盤の迫真の演技がより際立った様な気がします。
    そのゆるさの中に情緒が加われば、もう完璧!
    とは言え、あえて旗揚げ公演にハードルの高い作品を創り上げ、これを全員若手の役者さん達が堂々と演じ切ったわけですから、その自信に満ちた熱いエネルギーに感服いたします。

    あと劇作家役の宇都宮さんの演技が印象的でした。
    芝居中に観客をしっかり見据える演技はとても珍しく迫力が俄然アップします。
    これって集中力いるだろうなー

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