Birthdays 公演情報 Birthdays」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.0
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  • 満足度★★★★

    テーマは同じだが、その描き方は違う面白さ【Aチーム】
    本公演はテーマ「Birthdays」である。2作品との人の誕生を描いているが、その物語(脚本)、設定・雰囲気(演出)は対照的だったように思う。
    どちらの作品にも気になるところが...。

    この公演は演劇制作体V-NET創立15周年記念公演第2弾!という。この2作品を観てどちらのチームが面白かったかを投票し、2017年5月の「GK最強リーグ戦2017」への出場チームが決まるという。

    1作品目「ららら」(内海伯太氏 作・演出)は平凡な日常に異常(異例)なことを描く。
    2作品目「HAL」(マホロバ氏 作・演出)は特異な状況を作り出し、その中で平凡な暮らしを描く。
    日常に非日常(またはその逆)を描くことで、その対比の面白さを出そうとしていたように感じた。
    (55分×2作品 途中休憩10分) 

    ネタバレBOX

    舞台はどちらも同じようにホテルのロビー。上手側に横長ソファーとテーブル、下手側に受付カウンター、傘たて、マガジンラックが置かれている。

    「ららら」
    オーソドックスな観せ方...時間の流れが順方向という現在の世界の物語。嵐の夜という閉じた状況下、冒頭、台風情報が流れてくる。ホテルはオーナー・堤(江崎香澄サン)含め3人で運営している。宿泊客は商社マン1人、若い夫婦と夫の母親の3人家族の2組。その妻は妊娠しており臨月である。夫はマザコンで母親の言いなりである。嫁姑バトルというよりは姑に仕えている。客室(2階)にあるが、台風の影響で停電気味。そこで客を1階ロビーへ避難させる際、母親が嫁を落そうとしたと...。もちろん誤解である。勘違いで面白可笑しく見せるのはコメディの常套手法。ちなみに母親(門地ジル子サン)の嘆き、早く親を超えてほしいと呟く。一方、商社マンは同僚女性を妊娠させたが、結婚の意志がないため別れた。そのショックで女性は流産してしまう。この元彼女も現れて...。

    気になったのは、宿泊客の人物像なりは描かれていたが、それに比べてホテルの人々の人物像の描きが弱い。3人がどういう経緯で知り合い、このホテルで働くことになったのか、その関係性が見えてこない。タイトル「Birthdays」であるが、生きるへ繋がるのであれば、生きてきた過去にも触れてもよかった(55分では短いのだろうか)。

    「HAL」
    近未来に向けたロボット工学・開発チームの学会発表前夜、ホテルロビーでの不思議な出来事。人工知能ハルの叛乱を描いた「2001年宇宙の旅」を想起する。究極にカスタマイズされた人工知能は人間のよき理解者であり交歓者にもなり得る。そこに量子コンピューターも登場させ最先端科学(技術)の議論が展開し出す。もちろん要約すると...そういう形で簡易説明も忘れない。さて、主人公夫妻には子がいない。妻の妊娠しにくい体質というのが原因である。夫・秋山丈太郎(西川智宏サン)は結婚する前に付き合っていた彼女との間に子供が生まれていたことを知る。この最先端の技術を利用し、生まれた子との関わりを見るが...。自分の都合の良い(夜泣きなど子育ての苦労は見たくない)ようにシュミレーションを変えるパラレルワールドのようだ。

    気になったのは、妻が妊娠したと知った時、それまでシュミレーションしていた子(彼女)が新たな生命の出現によって上書きされたように感じる。そこには無かったこと、という虚の世界が観てとれて悲しかった。
    救いはカーテンコール後、舞台の両袖で父と子が見つめ合う姿があったこと。

    2作品はどちらかと言えば対極...常(王)道的な物語と斬新な作風のぶつかり合いが興味深かった。それだけ演劇制作体V-NETの層が厚いということ。

    次回公演を楽しみにしております。
  • 満足度★★★★

    見応えあり!
    【Aチーム】を観劇さてていただきました。

    「ららら」は、ちょっとウルッと感動系。

    「HAL」は、SFチックなフムフム興味系。

    ストーリー、作風の全く違う二作品、どちらも面白く見応えのある公演でした。



  • 満足度★★★★

    Bチームを拝見 花四つ星

     各作品55分。観客の投票で得票数が多い作品を作った側が次のコンペに進めるという企画。

    ネタバレBOX

    「HAL」は、キューブリックの「2001年宇宙の旅」に登場するメインコンピュータの名であるが、当然のことながら、今作もAIの発達する近未来を念頭に作られている。世の中には、我々の住み、暮らす世の中が、高度な知的生物によって創られたのみならず、彼らによって改変されたり、管理・観察されているという説があって、今作はそういう前提に立って、もし自分自身がそのような立場に立ったなら? を描くことで命の意味する所をSF的に描いている。このような高次の生き物が、一種の実験を行っているという説がどのようにして生まれたのか? についての知見は様々なレベルで回答があるであろうが、面白いのは、銀河系の構造と我らの脳内のdendro‐dendritic synapseの構造が良く似ているということにある、ということだ。まあ、こういった仮説に立っての物語の展開である。
     シナリオの理論構築面、すっきりしたセンスについては、こちらに軍配を上げたい所だが、そんなに演劇は単純ではない。即ち人間存在の深みを表すには、更に工夫が必要という側面があるからである。
     自分の評価では、もう1本の「ららら」が人間性の深みを描いた点では、こちらに分がある。総合で互角。甲乙つけがたかった。どうしても、というのであれば自分の好みでつけるしかない厳しい選択であった。
     因みに「ららら」の概要は、旧華族の独り息子に嫁いだ庶民の娘は、プライドの高い義母からは、恰も奴隷のように扱われているが、夫は幼児、何かというと蔵に閉じ込められた経験がトラウマとなっていて母の言いつけに背くことができず、結果妊娠9か月になる妻を庇うことすらできない。ところでこの親子3人が旅行をして泊まったホテルで、嵐の夜、妊婦が階段から落ちてお腹の子も本人も命の危機に晒される。現在このホテルの支配人をしている女性は元看護士。近くに医者もおらず、緊急事態の中で彼女が産婆役を務めることになった。(彼女が看護師を止めたのは医療行為を行って免許をはく奪された為だが、やむにやまれぬ状況下でそうしたのであろうことは、作品の中で描かれる彼女のキャラから明白である。)幸い、母子共に助けることができたが、今作にはサブストーリーがある。商事会社でトップの成績を誇るエリート商社マンと旧同僚の女との妊娠騒動である。妊娠6か月で流産の憂き目に追いやられたのみならず、商社を退職させられた女が、その復讐をしようと彼が泊まっているホテルを訊ねて来たのである。当初、自分の責任を認めたがらなかった商社マンが、上記の顛末に接し、自らの罪を認めて、女に心から侘び、彼女の汚名挽回に動こうと決意するまでが描かれる。更に、このホテルで働く者や出入り業者たちの過去を示唆し、支配人が如何なる人物であるかを示唆することで、作品に一本筋を通した。



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