満足度★★★★★
『浮標』は1940年に書かれた三好十郎さん(1958年没)の戯曲です。上演時間が4時間(休憩2回込み)という大作を、5年間に3度も上演。
主人公である画家の五郎は病床の美緒に、万葉の歌をよく読み聞かせます。戯曲が書かれた約75年前と、2016年の現在、そして約1300年前が同時に重なって存在する重層性は、演劇ならではの特別な体験です。時空を超えるアトラクションと言ってもいいと思います。
今回は若い俳優の健康的な肉体と、彼らが持つ長い未来の時間が、戦争と死というほぼ正反対のものと、見事に対比されていました。命、つまり生きるということを、全方位から描く傑作です。