朝に死す 公演情報 朝に死す」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.0
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  • 満足度★★★★

    本当に鋭く脆く揺れながら縺れ合う二人...【B】
    清水邦夫氏の初期(1958年)の作品で、自分は初めて観る。それは極限状態・状況下における2人芝居。

    演奏舞台アトリエ・九段下GEKIBA、その小空間に薄汚れたコンクリート壁、その上部に有刺鉄線があり殺伐とした後景を作り出す。そこに怪我をした女を背負って男が動き回る。そのうち疲れ、その場に座り込む。
    小空間、素舞台のため役者の演技力がその芝居の評価を決定付ける。その逃げ場のない人物表現を黙視する。

    ネタバレBOX

    梗概は、組織を裏切った男、その男を庇って銃で撃たれた女。この2人の一夜の夢物語。女は左足を銃で撃たれ負傷している。その女を背負い必死で逃げてきた。この2人は顔見知りではなく、偶然に出会ったらしい。2人会話はどこかぎこちなく弾まない。敢えてなのか過去の話は出てこない。多くは今という瞬間・状況を起点とした先の事ばかり。女は男を突き放すように自分を置いて逃げるように言う。男も始めはその言葉に呼応するように振る舞うが、何故か立ち去らない。その互いに意地を張ったような、それでいて気になる存在になっている。「人」という字は互いに背を向けているが、その実は支え合っている。男女の愛情というには寂寞感が漂い過ぎて切ない。そのうち朴訥に語る夢物語...その楽しそうな表情は本当の夢の中なのだろうか。ビールの栓、それが黄金色した小人が踊(躍)るようだと。

    夢の中の明日...身近な喜び、実はそんなところに人の幸せがあるのかもしれない。しかし現実は、そんなささやかな幸せにも届かない絶望の淵にいる。もう追っ手が来ないなど淡い期待と先々の絶望は去来する。その揺れる心情が心に響く。しかし、夜明け...銃声2発が...。

    冒頭、足の痛みは物語の進展とともに薄らいだのか、表情も和らぎ足の痛みを庇った演技が観られなくなった。その演技に比例して緊張感が薄れ、会話の濃密さも溶け出し、勿体無く思う。

    照明は全体的に薄暗く、緊迫感溢れる状況を描き出す。また場面によっては、少しエキセントリックのようにも感じた。音は、生演奏の音楽と音響の効果技術の使い分け、その演出に魅了された。

    次回公演も期待しております

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