満足度★★★
各シーンの繋ぎ方にもう一歩の何かが不足
20日、劇団浪漫狂の第40回公演『ピアソラータ』を観てきた。今回も劇団の若手中心に若干の客演を加えての公演であった。
プログラムには、粗筋と登場人物の相関関係図が載せられていたので、参考までに粗筋をアップしてみる。
街の大規模開発を仕掛ける大企業と街の個人店、街の住人やホームレス達…
それそれの生き方や思惑が交錯し、世知辛い世の中で それぞれの立場から"何が本当の幸せなのか"考え、苦悩する人々の人間模様を…
笑いあり、涙ありでお贈りする 劇団浪漫狂のハートウォーミングストーリー
とあるのだが、具体的には街のしがない洋食屋を営む総介とその息子歩を軸に、宗介に行為を寄せている幼なじみのちなみ、店の近辺の開発を進めている会社の社長以下の社員たち、そして実はその会社の元会長がリーダーとなって店のそばのダンボールハウスに住み着くホームレスたちが起こす、地上げ立ち退き阻止騒動と恋愛問題の絡みあったドタバタ劇。
個々のシーンの出来は良くて、時には笑い時には目をうるませられる瞬間もあるのだが、そのシーンが繋がるとど、ういうわけか間延びするというか緊張感が薄れてしまうというか。これは、原作・脚本・演出上の問題なのだと思う。とにかく、無駄な間と笑えないくだらないギャグがやや大すぎるきらいがあるのだ。
役者たちは熱演。特に主人公・宗介を演じたJ田平と彼を慕う幼なじみ・ちなみを演じた伴優香は秀逸な出来。ホームレス集団のリーダーである通称エリート役の成島有騎はもう少し謎めいた影が欲しかったし、歩の実母・貴子を演じた宮島歩はどことなく幸の薄いイメージがあって役柄にあっているのかどうか微妙。時間的に80分ほどに仕上げていたが、内容的には妥当な尺と言えるだろう。シーンの持ち味を、もっと喜怒哀楽の感情の昂ぶりのバランスを考えて繋いでいけば、もっと面白く泣ける作品であったに違いない。そこが惜しかった。
以前観た時も思ったのだが、脚本と演出を分けて行ったほうが、劇団としては生きるように思えるのだが…