青森が拠点の劇団渡辺源四郎商店の畑澤聖悟さんが、劇団民藝に脚本を書き下ろす第三弾。「ウルトラマン」の生みの親、金城哲夫(きんじょう・てつお)さんのお話。懐かしく、微笑ましく楽しんで観ていましたが、やがて涙、涙でした。テレビ局の横暴に振り回される特撮会社、沖縄国際海洋博覧会(1975年)で東京資本の会社から搾取される島民、そして今、米軍が沖縄で起こす事故、事件…。
満足度★★★★
沖縄を考える舞台
ウルトラマンが登場する1990年代は既に戦争もなく、人類は国を超えて宇宙からの外敵である怪獣に対処している。沖縄県出身で、先の戦争では沖縄戦の鉄の暴風を生き延びた、ウルトラマンの生みの親、金城哲夫。彼がウルトラマンで描いた世界は、ある意味で人類の理想郷。もちろん、沖縄に米軍基地などない世の中だ。
この戯曲の中で、「我々はまだ、ウルトラマンを超えるヒーローを生み出していない」という作家たちの言葉が出てくる。その言葉の意味の通りなのだが、今も広大な米軍基地が存在し、さらに辺野古には新基地が作られようとしているそんな沖縄の今を思わせるせりふでもある。
光の国から僕らのために、来たぞ我らのウルトラマン。今の世の中にウルトラマンがきてくれたら、と願わざるを得ない、そんな思いで劇場を後にする。