満足度★★★★
誤射そして誤爆!
極限の状態で罪のない人間を敵と思って打ち殺すことは誤射になるのだろうか。この芝居では明らかに犯罪として捉えている。
そのようなことは戦争という状況の中で葬り去られることは星の数ほどあるのだろう。これからの時代は既にドローン(戦闘用)が使用され所謂接近戦は少なくなり兵士の死者は減少しても、巻き添えで亡くなる人は決して減らないだろう。何のための戦争そして命の大切さを今一度考える必要を起こさせる作品である。
映像がやや見にくかったのが惜しまれる。
満足度★★★
サバイブ
アフタートークで作者もおっしゃっていましたが
<生き残る>という本能と理性の内的な戦いが描かれていた。
只々<生き残る>という強靭な意志を持ったものの狂気を超える本能の行動。これこそが極限状態に置かれた人間の姿そのものなのだろう。
”善””悪”ではない最も基本的な欲望が人間を覆い、その事の実現の為に行動する。殺人も辞さない状態に陥ってしまうという描写に頷くしかない。
観終わった後、この作品がとても散文的に感じられたのは気のせいだろうか?
劇的なフィクションの要素をはぎ取った記述が意図的になされたのだろうか?
その意味では、俗に云う「演劇的な云々」には当てはまらない作品だと思う。
逆の立場から見た(イラク側から)B面のような作品も観てみたい。
同じような物になるのだろうが、蹂躙された側のサバイバルはまた違った狂気を描き出すのではないだろうか?
散文のようなこの作品が良い作品なのかそうではないのか判断はできない。
決して涙や感動などという意図的な演劇空間は求められない作品だ。
個人的には、演劇である以上、もっと意訳した作劇もできたのだろうにとは思う。
満足度★★★★
ほんの一歩だけ近くに。
社会派で考えさせられる作品。
パリでのテロが起きたばかりのこの時期にみると、"遠く離れた、自分とは縁の無い争い"が、ほんの少しだけリアルに捉えられる。一歩だけ近付ける。
何が正義で悪なのか、それは立場であっという間に変わる。すべての目線から、正しいと言えるものは見つけられるのだろうか?
冒頭で示されるストイックな兵士の様子と、デリケートな心の動きの対比。
民衆の挙動。
実際のものであろう映像。
興味深く拝見しました。
満足度★★★★★
臨場感と緊張感と…
三方にまるで工事現場の足場のようなパイプ、中央に平たい壇というシンプルな舞台の後方に大きなスクリーン、そこで開演前から役者がハードなトレーニングを行っている…。もうそれを見ただけで並の芝居じゃないと思った。殺し殺されるという極限状況の中で、変調をきたしていく兵士の姿が見事に説得力を持って迫ってきた。
これが兵站にかりだされる自衛隊員の姿にならないことを切に願う。
満足度★★★★★
殺らなければ、殺られる・・・
“リアル”故、心に響く作品であった。
舞台背面いっぱいに映し出される映像をはじめとし、
素晴らしい演出が、作品の意義を力強く訴求していた。
描かれている事象は、決して、「遠い国での“出来事”」と思ってはいけないだろう・・・。
「死んでしまえば、敵も味方もない」
という台詞が印象に残った。
満足度★★★★★
凄すぎて長く感じるという、稀な舞台でした!
1時間半という短さにも関わらず、2~3時間分の重量を感じさせる稀な舞台でした。実際長く感じた。それは決して退屈という意味ではなく、演技、舞台美術、映像、音響、演出などの一つ一つが見事で、私がそれらすべてを噛み締めるように見たせいだと思う。美しいオブジェを配した美術は開始前から素晴らしい舞台を予感させたし、きっちりと兵士の体を作ってきた俳優さんたちの体も見事だったし、(汗滲み、しっかり見せてもらいました)何よりもアメリカの兵士たちとヘジャブを着たイラク人の母を配した演出が素晴らしかった。映像も効いている。これはあの「映像の世紀」か?とふっと勘違いしそうになる。特に生の映像らしきものが流れると、臨場感がありすぎて自分の観客としての立場があいまいになる。おそらくこれこそが演出家が狙ったものなのだろうな、と気付いたのは帰りの電車の中でした。
満足度★★★★★
世界最強の軍隊といえども
世界最強の米軍といえども、それを構成するのはひとりひとりの普通の人間。戦場という極限状態に陥れば、誰もがそうなるように、精神を病んで悩み、苦しみます。普通の人間を集団的に狂気に走らせるものとは何なのか、考えるきっかけになる作品でした。
兵士に相応しい鍛えられた肉体と面構えを持った俳優をよくここまで集めることが出来たなあと感心しながらも、日本の近未来を見ているようで、背筋が凍る思いでした。
満足度★★★★★
役者の身体能力・鍛錬に注目
初演は5年前であった。あの時よりずっと真に迫ってくるのは、日本の右傾化・軍事化が着々と進み、直ぐにでも日本人がここで描かれているような体験をしなければならないということに現実感が伴うからだろう。
宙空に設えられたヒジャブをつけたイスラム女性の後ろ姿のようなオブジェや、上手・下手などに矢張りヒジャブを纏った黒衣の女性が立つのも、殺人者そのものである米兵を追い詰める民衆の影の圧迫感を表して効果的である。また、役者たちの身体鍛錬の見事さも素晴らしい。彼らのプロ意識に敬意を表する。また本日19日マチネ公演後と明日ソワレ公演後には来日している原作者のマガノーイのアフタートークがある。これもお勧め。(追記2015.11.20:02:43)