バグダッドの兵士たち 公演情報 バグダッドの兵士たち」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.5
1-8件 / 8件中
  • 満足度★★★★

    誤射そして誤爆!
    極限の状態で罪のない人間を敵と思って打ち殺すことは誤射になるのだろうか。この芝居では明らかに犯罪として捉えている。
    そのようなことは戦争という状況の中で葬り去られることは星の数ほどあるのだろう。これからの時代は既にドローン(戦闘用)が使用され所謂接近戦は少なくなり兵士の死者は減少しても、巻き添えで亡くなる人は決して減らないだろう。何のための戦争そして命の大切さを今一度考える必要を起こさせる作品である。
    映像がやや見にくかったのが惜しまれる。

  • 満足度★★★

    サバイブ
    アフタートークで作者もおっしゃっていましたが
    <生き残る>という本能と理性の内的な戦いが描かれていた。

    只々<生き残る>という強靭な意志を持ったものの狂気を超える本能の行動。これこそが極限状態に置かれた人間の姿そのものなのだろう。
    ”善””悪”ではない最も基本的な欲望が人間を覆い、その事の実現の為に行動する。殺人も辞さない状態に陥ってしまうという描写に頷くしかない。

    観終わった後、この作品がとても散文的に感じられたのは気のせいだろうか?
    劇的なフィクションの要素をはぎ取った記述が意図的になされたのだろうか?
    その意味では、俗に云う「演劇的な云々」には当てはまらない作品だと思う。

    逆の立場から見た(イラク側から)B面のような作品も観てみたい。
    同じような物になるのだろうが、蹂躙された側のサバイバルはまた違った狂気を描き出すのではないだろうか?

    散文のようなこの作品が良い作品なのかそうではないのか判断はできない。

    決して涙や感動などという意図的な演劇空間は求められない作品だ。

    個人的には、演劇である以上、もっと意訳した作劇もできたのだろうにとは思う。

    ネタバレBOX

    アフタートークが開催されたが、その間、ロビーの喧騒が非常に気になった。

    出演者とお客(友人・知人)の興奮した声・声・声

    しかし、作家が登壇しているというのに、この騒ぎ方はなんなのだろう???

    出演者たちには、作品を演じたという自分たちの使命が解ってないのではないか?
    演じた自分を誇示したいだけで、作家のことは二の次で、トークを聴こうとしている客に気も遣えない。
    好きな集団だけに、余計に幻滅を感じた。

    作品に真摯に向き合えていないのでは?と疑問を抱かせる騒音だったのがとても我慢の限界を超えていた。
    客席の最後列で聴き入る位の情熱が欲しい。
  • 満足度★★★★

    ほんの一歩だけ近くに。
    社会派で考えさせられる作品。
    パリでのテロが起きたばかりのこの時期にみると、"遠く離れた、自分とは縁の無い争い"が、ほんの少しだけリアルに捉えられる。一歩だけ近付ける。
    何が正義で悪なのか、それは立場であっという間に変わる。すべての目線から、正しいと言えるものは見つけられるのだろうか?

    冒頭で示されるストイックな兵士の様子と、デリケートな心の動きの対比。
    民衆の挙動。
    実際のものであろう映像。
    興味深く拝見しました。

  • 満足度★★★★★

    臨場感と緊張感と…
     三方にまるで工事現場の足場のようなパイプ、中央に平たい壇というシンプルな舞台の後方に大きなスクリーン、そこで開演前から役者がハードなトレーニングを行っている…。もうそれを見ただけで並の芝居じゃないと思った。殺し殺されるという極限状況の中で、変調をきたしていく兵士の姿が見事に説得力を持って迫ってきた。
     これが兵站にかりだされる自衛隊員の姿にならないことを切に願う。

  • 満足度★★★★★

    殺らなければ、殺られる・・・
    “リアル”故、心に響く作品であった。

    舞台背面いっぱいに映し出される映像をはじめとし、
    素晴らしい演出が、作品の意義を力強く訴求していた。

    描かれている事象は、決して、「遠い国での“出来事”」と思ってはいけないだろう・・・。

    「死んでしまえば、敵も味方もない」
    という台詞が印象に残った。

  • 満足度★★★★★

    凄すぎて長く感じるという、稀な舞台でした!
    1時間半という短さにも関わらず、2~3時間分の重量を感じさせる稀な舞台でした。実際長く感じた。それは決して退屈という意味ではなく、演技、舞台美術、映像、音響、演出などの一つ一つが見事で、私がそれらすべてを噛み締めるように見たせいだと思う。美しいオブジェを配した美術は開始前から素晴らしい舞台を予感させたし、きっちりと兵士の体を作ってきた俳優さんたちの体も見事だったし、(汗滲み、しっかり見せてもらいました)何よりもアメリカの兵士たちとヘジャブを着たイラク人の母を配した演出が素晴らしかった。映像も効いている。これはあの「映像の世紀」か?とふっと勘違いしそうになる。特に生の映像らしきものが流れると、臨場感がありすぎて自分の観客としての立場があいまいになる。おそらくこれこそが演出家が狙ったものなのだろうな、と気付いたのは帰りの電車の中でした。

    ネタバレBOX

    ヘジャブの女優さん、すごかったですね。アラブ人っぽい顔立ちの人だなぁ、と思って観ていましたが、最後の挨拶の時、巧みなメイクでびっくりしました。(すみません、女なのでこんなことが気になる)この人の舞台開始前からの長時間の静止も、また途中の体が溶けていくような動きも、慟哭と恐怖に凝り固まった怨霊を見るようで、舞台に凄みを添えている。いつも間にか消え、そして現れ、最後は冷徹に死んだ人々を撮っているのも、バグダット中に漂う女たちの怨念のようだ。いや~、凄い演出でした。アメリカ兵の中では、トレバーが死んでカーテンの中に消えていくシーンが印象的。彼を愛し慈しんだ人も、また彼が愛した人もいたであろうに、壊れていく魂にはその愛の意味すら縁遠くなってしまったのか、あっさりと美しく消えていくのは悲しすぎる。
  • 満足度★★★★★

    世界最強の軍隊といえども
    世界最強の米軍といえども、それを構成するのはひとりひとりの普通の人間。戦場という極限状態に陥れば、誰もがそうなるように、精神を病んで悩み、苦しみます。普通の人間を集団的に狂気に走らせるものとは何なのか、考えるきっかけになる作品でした。

    兵士に相応しい鍛えられた肉体と面構えを持った俳優をよくここまで集めることが出来たなあと感心しながらも、日本の近未来を見ているようで、背筋が凍る思いでした。

  • 満足度★★★★★

    役者の身体能力・鍛錬に注目
     初演は5年前であった。あの時よりずっと真に迫ってくるのは、日本の右傾化・軍事化が着々と進み、直ぐにでも日本人がここで描かれているような体験をしなければならないということに現実感が伴うからだろう。
     宙空に設えられたヒジャブをつけたイスラム女性の後ろ姿のようなオブジェや、上手・下手などに矢張りヒジャブを纏った黒衣の女性が立つのも、殺人者そのものである米兵を追い詰める民衆の影の圧迫感を表して効果的である。また、役者たちの身体鍛錬の見事さも素晴らしい。彼らのプロ意識に敬意を表する。また本日19日マチネ公演後と明日ソワレ公演後には来日している原作者のマガノーイのアフタートークがある。これもお勧め。(追記2015.11.20:02:43)

    ネタバレBOX

     ここで描かれている米国人は、兵士であるが、イラク戦争時、最悪の行動をとっていたのは、無論、傭兵である。彼らは人を殺すのが楽しみと考えているとしか思えない。女性をレイプし、人々を拷問に掛けて楽しんだ挙句惨殺していた。代表的なのは、ブラックウォーターの傭兵たちである。無論、傭兵の方が悪いことを平気でするのには、訳がある。国軍の兵士は、ジュネーブ条約などで禁じられている行為を為した場合、戦争犯罪を犯したとして軍法会議にかけられ処罰される。だが、私兵である傭兵にはこの懸念がない。今作で一般市民を殺した兵士達が処分を気にしているのはこの為である。単に、人間として悩んでいるだけではないのだ。
    そもそも、人間として悩むくらいなら、兵士になるかならないかのレベルでもっと深刻な悩みを抱えているだろう。そんなことも想像できない知的レベルにアメリカの大衆が置かれていることの意味する所を考えていないのは、当しく現在の日本の大衆と変わらない。そして、この程度の頭脳では、たかが貧乏程度で、己の魂を売ることに大きな抵抗はないのだ。考える人間なら、貧乏を恥じることはない。恥ずべきは魂の弛緩であるという程度のことには気付く。この程度のことを自分の頭で考え実践することもできない連中は所詮、人間らしい生き方など望むべくもないのは当然のことだろう。
    根本的な問題として、アメリカ人の誰がISの行為を責められるか? 今作でもたくさんイラク人を蔑視した言い方が出てくるが、バカを言っちゃいけない。そもそも大量破壊兵器が無いことを証明せよなどという難癖をつけ、何の罪もないイラクに殴り込みを掛け、残虐極まる攻撃を仕掛けたのは米英である。彼らは新たな武器の宣伝に、古い武器の刷新に、イラクの良質で豊富な石油の収奪に、また軍需産業の儲けと回転に、更には自分達で破壊しておいて建設を請け負うというマッチポンプ収奪迄してきた。イラクの国宝の多くがアメリカに盗まれたのは周知の事実である。にも関わらず、国籍がアメリカだというだけで、彼らはイラク人より偉い、或いは命が重いと考えているらしい。愚か者である。
    どういうアイロニーか。今作では、おまけに医者になりたいと言う者が人殺しを生業としているのだ。精神的に穢れていることにも気付いていないかのようではないか? 少なくとも遠い木霊のようにしか彼らの魂には響いていないのだ。そして、心は正常を装っている。何と悍ましい欺瞞であることか! おまけにそれを軍に来なければまともな人生が歩めないせいにしているのだ。よその国に出掛けて行って頼まれもしない人殺しをし、あまつさえそれを正当化する為手前のスケベ根性を丸出しにしていやがる。下司野郎! それがアメリカ人の姿だろう。少なくとも一方的にやられる側からはそのように見られて当然である。
    ISが、各地で騒動を引き起こしている。しつこいようだが、そもそもISのような組織ができてしまった主たる原因がアメリカ・英国が中心になって起こしたこのイラク戦争であった。はっきり言って英米はイラクにいちゃもんをつけ、無辜の民を虐殺、レイプ、拷問に掛け恥辱を与え大地を穢した。バクダッドのような人口密集地で大量のDU弾を用い地球の年齢ほどの半減期を持つ放射性核種で汚染した。
    無論この汚染に関して国連も英米も知らんぷりを決め込んでいるが、これは明らかな人道に対する罪、戦争犯罪として賠償させるべきである。仮に彼らの主張するように原因がDUの放射線ではないにせよ、重金属毒性の可能性も含めて国際的な第三者委員会による検証が必要である。そして客観的判断で英米のDU使用に非人道性があったと認められた場合、彼らは、国家が破綻しても払いきれぬだけの借財を背負うべきである。当然のことだ。 
    殊に副大統領であったチェイニーの悪、ブラックウォーターの創設者、エリック・プリンスらの戦争犯罪は国際的に指弾されるべきである。ブッシュにも無論罪はあるが、彼の最大の罪は愚かであったこと。愚かであり続けていることである。丁度、パシリ安倍のように。
    今回の観たいで自分は原作者が殆ど原作を書くためのデータをインターネットで集めた、と書いたが、彼は全部をインターネットで集めたと言っていた。こちらが自分が聞いた正確な話である。観たいでは少し遠慮して書いたのだ。だが、恐らくネットで集めた情報は、一般的米兵の言質に近かったのだろうと再演を拝見して思う。露骨な表現がたくさん出ていることからも、在日米兵から得るデータ・印象からも、非公式な場所でホントに語られていることに近いだろうと思うのである。その生の感覚を吉原さんの見事な翻訳は、日本で暮らす我々にも届けてくれている。この自然な日本語にトランスレイトされた翻訳の、本質の正確な捉え方がなければ、今作は、ここまでキチンと我ら観客に届くことは無かったであろう。

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