満足度★★★★★
片想いだからこそ、儚い。
『全員、片想い』というオムニバス朗読劇を観てきた。
一人相撲なんだから、2倍熱い、火傷してしまいそうな恋心は、実ることも、失ってしまうこともない。
ただ儚く、切なく、狂おしいこの感情は、告げることができなかった分、いつまでも色褪せることない宝物として、美しい想い出として、胸に一生残り続けるだろう。
そんな彼女ら(と彼)の傷つきたくない、傷つけたくないという優しさに包まれた涙ぐましい物語が観れて、本当に和まされた。心の琴線に触れた。
そして不器用過ぎて、臆病過ぎて、孤独過ぎて伝えられなかった、キュンとする自分の過去を想いだして、ついついもらい泣きしてしまった。
特に、第六章『片想いスパイラル』の中で、男としての生き方、自由を追い求めて日本留学を決めた韓国人女性のソヨンが、親友のユキちゃんにずっと恋焦がれるも成就せず、最後に発した「私は、私が私らしくいられるために来た、この国の雑踏の中に、ゆっくりと、歩みを進めた」という言葉には、完全に自分を投影してしまって、いてもたってもいられない気持ちにさせられた。
僕が大検をやって16歳に東大に受かって日本に来たのも、彼女と同じく、内心の自由、居場所を探してだ。
兵役や言論統制、先輩風吹かして物事を通そうとする風潮と、それを是とする周りには、ずっと違和感を覚えていたし、それは僕の中でどんどん膨らんでいき、じわりじわりと僕を苦しめていたから。
でも、憧れていたお隣の国に勇気をしぼって来たからといって、それで幸せが、自分らしい生き方が保証されるわけではない。
あくまでもギリギリ戦える土俵に立てただけ。
異邦人として偏見の目に晒されながらも、納得いかないときは戦っていける土俵に。
そう、僕の物語はまだまだ続くのだ。
とはいえ、この経験は僕にとってコンプレックスなだけではないし、ましてやこの国に来たことを後悔してるわけでもない。
たとえば視点、審美眼のようなものを僕にもたらしてくれた。
表情や服装、仕草などから、簡単にその人の気持ちや人となりを察することができるようになったし、多角的に計算して心に響く物語を紡げる文章力だって手に入れた。
それに何よりも、僕は今のほうがずっとイキイキしている。
なんか話がそれたみたいだけれど、「命短し恋せよ乙女」言うし、もっともっと青春しきゃもったいないんで、学業も、研究も、そして恋愛も全力でぶつかっていきたい。