満足度★★★★
混沌の面白さ
物語の舞台をベトナムに移し替えたマクベスは、歌や群舞を含めた詩的な印象と、狂言回し的に登場する3人だけでなく全部で17人もいる魔女たちのうごめく様子、客席が揺れるほど迫力ある大人数での殺陣など、多くのみどころに加えて、現代に通じる批評精神のこもったチカラ技ともいえる舞台だった。
男性が演じる魔女の歌声が、観終わったあとも長いこと耳に残った。
満足度★★★★
破滅のカタルシス
四角く象られた広間と奥へ続く階段、段上に王の椅子、背後に通路。人が手前脇や奥脇、上段の上下から頻繁に出入りし、歌い、走る。階段の上手側に坂本弘道と諏訪創が控え、生演奏をしている。坂本氏のパフォーマンス色も健在だったが、シンプルなコード進行の短調の曲が多く、もっと猥雑感のある曲も欲しかった。
正方形の演技エリアの左右にも客席があり、自分は上手側に座ったが、装置、群舞など正面に向けて作られており、初めは若干淋しく感じたが次第に物語に引き込まれ、気にならなくなった。
マクベスと夫人の両頭が突出し、二人の微妙な関係性から導かれる王殺しと隠蔽工作の顛末が、鮮やかに描き出されている。アジアのどこかを舞台に置き換えたとの事だが、その特色はさほど印象に残らなかった。
この作品はやはり美味しい。狂気が手を血に染めて行く。宴席、無二の戦友バンクォーの亡霊を見て取り乱す場面などは、小気味良い。
ダンカン王の子孫の巻き返しが勢いづく中、再び魔女に会って身の保証を取り付けたマクベスは、「森が動いぬ限り大丈夫」「女から産まれた者の手にはかからない」という約束に束の間の安堵を得るが、ついに臣下からの「森が・・!」、そして城門を破った宿敵マクダフの奇異な出自を告げられる、その瞬間のマクベスの身体。ある選択の過ちが自らを破滅へと陥れた悔恨の断末魔は、カタルシスそのもので、この快楽の立役者は間違いなくマクベス役若杉宏二、夫人役伊藤弘子。また改めてシェイクスピアの「創造力」を噛みしめた。
テンポ感のある舞台処理により、美味しいマクベスになった。チラシにあった翻案や演出の斬新さよりは、戯曲の幹をしっかり見せる演出で、実直な舞台作りだったと思う。
満足度★★★
ライブ感が楽しめます
シェークスピアの四大悲劇の一つ「マクベス」は、日本でもさまざまな形で上演されてきた。流山児★事務所では、初めての海外公演を成し遂げた記念碑的代表作という。
今回の「流山児マクベス」、音楽を「見せるライブ」で行い、歌や踊りも見せ場の一つ。現代社会に物を申しながら、暴君が滅びていくさまを派手なパフォーマンスを交えて群像劇ふうに描いてみせている。
引き込まれる舞台ではあるが、若干、難解な部分もある。