ソリテュードボーイ・イノセンス 公演情報 ソリテュードボーイ・イノセンス」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 5.0
1-1件 / 1件中
  • 満足度★★★★★

    どう死にたいか?~Aを観劇~
    初日のぎこちなさは尻上がりに滑らかさをまし、圧巻の終盤へとなだれ込む。
    死んでしまった孤独な青年が少しずつ輪郭を現してくるエピソードが素晴らしい。
    このエピソードがどれも深くて上手いので、冒頭の多少無理やり感を忘れさせる。
    ネタバレ後にどっと泣かせる展開が見事で、役者さんもボロ泣きだが私もボロ泣きした。

    ネタバレBOX

    舞台上には小さいワンルームマンションのような部屋が再現されている。
    下手側に玄関へ続く出入り口、上手にベッドが置かれている。
    ブティックのような白いディスプレイ用の棚があり、靴や小物が並んでいる。
    女の子の部屋のようだが、靴など見ると男の子の部屋のようでもある。

    ひとりの青年がこの部屋で亡くなり、その青年からの葉書を持って
    6人の人々が集まってくる。
    テレビの再現ドラマに時々出る女優、タウン誌のライター、うどん屋の青年、
    メイド喫茶の店長、クリニックの看護師、元アイドルのOL。
    彼らは、“大した付き合いはないけど”と言いつつ、青年と自分との関りを語り始める。
    次第に明らかになる驚きの事実。
    そして7人目が登場する…。

    “じゃあ、どんな風に知り合ったのか、再現してみましょうよ”みたいな持って行き方が
    若干苦しいかな、と思いながら観ていたが、個々のエピソードのリアルな展開に
    ぐんぐん引き込まれ、一気に入り込んだ。

    6人がそれぞれ全く違う立場で彼と接していて、その距離感のバランスが良い。
    そのため彼の人物像がとても立体的で多面的になった。
    年齢も職業も違う人々の再現ドラマの中で、青年は生き生きと甦り、歩き出す。
    そして最後にこの会の趣旨が明らかにされ、全体像が見えてからが泣けた。

    なんだろう?
    話は解ったし、過去のいきさつも解った、後は“贈る言葉”でしょ、と
    そこまで読めるのに、演じる方も観ている方もボロ泣きしてしまう。
    素直な力の抜けた台詞が、本当に優しくて弱くて切ない。
    彼が、誰かの人生を変えるきっかけだったことが伝わってくる。

    金子大輝さんの、控えめながら喜びを表す表情が
    高校生らしい初々しさを含んでいて良かった。
    亡くなった青年に一番近い人物像を体現して秀逸。
    素なのか演技なのかわからないラインで成功している気がした。

    当日パンフにある出演者への質問、「どう死にたいか?」に
    この部屋の青年は黙って最高の答えを出してくれたのだった。

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