おだまき 〜紡げども紡げども〜 公演情報 おだまき 〜紡げども紡げども〜」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.5
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  • 満足度★★★★

    人と人との綾
     タイトルの“おだまき”は“いとくり”即ち中空で周りに糸を巻く器具を意味すると同時に植物のオダマキをもイメージさせるが、諏訪の製糸工場の話である。但し、物語で製糸工場のシステムなんぞ話したって何にも面白くはない。製糸工場で紡がれる人と人との関わりが、恰も繭から紡がれた生糸が様々な織物に仕立てあげれられて行くように、紡がれてゆく点が、劇化されているのである。

    ネタバレBOX

    描かれるのは、レーヨンが出始めた頃だが、まだまだ絹が日本の輸出を引っ張っていた時代でもある。働いていたのは、所謂“女工”である。「女工哀史」などという本も絶版になっていなければ読めるはずだから、詳細はこちらで当たって欲しいが、大体、貧農の娘が口減らしで出されることが多かった。今作でも、白米が食えるということが、彼女達の驚きや喜びとして語られているのを見ても分かろう。実際、貧農の暮らしでは、主食は稗や粟などの雑穀が多かった。米は自分達が作っても自分達の口には入らなかったのである。当然、多くの娘は字も読めない。書くことが出来ないのは無論である。だから、親元へ手紙を送るにも世話役などに頼んで書いて貰う訳だ。然し、世話役達も代筆だけやっている訳ではなく、一人で多くの女工の面倒を見ている訳だから、代筆している暇は殆ど無いに等しい。それで、先輩で字の書ける面倒見の良い人を頼る訳である。
    初は、入社4年にして、指導係を務める優秀な女工で性格も良い。面倒見も良いので、自然、年端も行かぬ後輩達から頼られる。それで、忙しい世話役達に代わって代筆をしてやっていた。そんな初を新米女工達は姉のように慕い、なにくれとなく、本音を漏らす。代筆は基本口述筆記だから、女工達の言うことをそのまま書けば良いようなものだが、そうは行かない。年端もいかない娘達である。親が心配しないはずがない。ちゃんと食べているか? 健康に過ごしているか? 苛められたり困ったりして居ないか等々、心配の種など尽きるハズも無かろう。そんな親元へ親の心配するような内容を送られれば、マズイことになりかねないのは、誰しも分かる。で会社では、手紙の内容をチェックする体制が取られていた。だから、先ず、最初の手紙は、ありきたりの内容を書き、別の手紙には、本音を書いて貰って、郵便がどういう憂き目を見るかをじっくり観察した後、いざとなったら、本音の手紙を出すということにしたのが、春だった。ところで、この所、諏訪でも女工達による労働争議が頻繁に持ちあがっており、この工場でも社長以下番頭や検番は、神経を尖らせていた。そんな時、女工達の親が何人か会社に待遇が悪いと乗り込んで来た。その原因が代筆による手紙の内容だった所から、初が、単に代筆をしてやったのではなく、労働争議の首謀者ではないか、との疑いを掛けられてしまった。番頭は筆跡を比べて初は無実だと判断したが、初が僅か4年で指導係になるという異例の出世をしたことや、美人で、性格も良く、後輩達に好かれていることに嫉妬する手合もいたので、話はこんがらがってゆく。更に、彼女は、社長、和彦の実子で二男の旧制高校、最上級生の秀から、結婚を申し込まれる。然し、彼女には既に心に決めた人が居た。社長の愛人だった女の子である。社長は、愛人から息子を引き取り、連れ子として、現在の妻の所に養子に入ったのだ。それで、正妻の息子は、二男なのである。ところで、初の心に決めた人とは、この社長の連れ子、雅彦であった。二人は既に一緒になることに決めており、この工場を後にして二人だけの再出発を図ろうとしていたのである。
     だが、運命は皮肉だ。死んだと思っていた愛人、雅子は、天竜川で漁師をしていた、この製糸工場の門番の妻になっていたのである。而も、彼女は普段京都の製糸工場で女工達の面倒を見ていた為、諏訪に来ることが無かった。そんな関係で、互いに嘗ての恋の相手が、工場の社長に収まっていることも、愛した女が存命であることも知らなかった。雅子が、工場に来たのは、京都で労働運動をしているリーダーから、娘の働いている諏訪の製糸工場で労働争議を起こす、と聞いて居も立ても居られずその旨知らせに来たのである。ところが、娘は、知らなかったとはいえ種違いの兄を愛し、子まで宿していた。だが、事実を端的に言うことは出来ない。この結婚は認められない、と強行に反対するのみである。そこへ、今では鉄砲玉の竜と呼ばれる労働運動家、竜彦が現れる。無論、争議を起こす為だ。然し、この時、火の手が上がる。これは、初を罪に陥れる為に世話役が、春を吊るしあげた際、春は、例の本音の手紙があることを話し、取り上げられてしまったのを後悔して、世話役の目を盗んで手紙に火をつけた所、火の粉が飛んで火事になったのだ。身重の初は、後輩達を助けに走る。雅彦は初を追って走る。火勢の強まる中、初は後輩達に声を掛けて励まし助けたが、自らは命を落とした。雅彦も初を追って火の中に飛び込んだ為、落命した。和彦は、自らの過去を暴かれ、息子と種違いとはいえ、妹が結ばれてしまった真実を知って自殺する。結局、全部で4人が亡くなった。その顛末をかつての活動家、竜彦が、女工、春の孫娘が訪ねて来たことで話す、という作りになっている。
     労使の追突のみで終わらせず、オイディプスを想起させるような血の因縁話として持っていっている点で、流石に迫力はあるが、炎の広がる原因を、和彦が社長就任の条件として引き受けた15人のコレラ罹患女工殺害致死事件の際の放火に結び付けている点に、矢張り牽強付会を感じる。寧ろ、この点は科白化せずに観客の想像力に委ねても良かったのではあるまいか。その為には、もう少し、近親相姦が観客にショックを与えるように作る必要はあるが。
     基本的には良く出来たシナリオであり、演技力も高いし、舞台美術の質も高ければ場転のスピードも見事だ。観に行って損は無い。
  • 満足度★★★★★

    う~ん2時間半に圧縮したソープドラマだったかな
    結構目が離せなくて引き付けられました

    会場も大きくて綺麗でしたが、上演が始まってから上客だからと人の多い列(観劇しやすい良い座席の確保してあったんでしょうね!)に無理やり座らせるのはいかがなものかと思いました。他に結構観劇の邪魔せずに座れる席があったのに! そ~ゆ~配慮と開演前の座の温めは無かったですね=全席自由なんだから案内された上客さんも上演が開始していれば観劇の邪魔になるような席を外す思考をされた方がスマートだと思いましたよっ!

    上記、腹は立ったが作品の出来は良かった。

    でも高齢者の多い客層でもあり、開演前の前説で周囲への迷惑行為禁止は強めに言うべきと思えた。=自宅のリビングではないので上演中の私語は慎む!と・・・・守れていない=ただ年食っただけの情けない老人が加齢臭撒き散らしていて、かなりいただけなかった。(ケータイ電源切り等は言わなくても大丈夫そうな年齢層に感じました)

    本当に役者さんの仕事も上手で、台詞も聞き取り易く音量も良く。作品自体の出来も良かった分、上記2点が大変気になったです。(一つはスタッフの配慮の無さからくるものであるので、次回あれば猛省・改善すべきですね。)

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