死の舞踏 公演情報 死の舞踏」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.0
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  • 満足度★★★★

    凄まじい夫婦
    前日まで寝たきり生活だったので、観に行けたのは奇蹟というか・・・・(苦笑)。
    仲代さんと白石さんのコンビで夫婦役とはぜがひでも観ておこうと珍しく去年のうちに予約しました。
    実はリーディング公演と知らずにチケットを予約したのですが、そこは名優だけに普通の芝居に勝るとも劣らない楽しさでした。
    演出が映画『日本の悲劇』で仲代さんの信頼も厚い小林政広監督なんですね。舞台の演出家ならまた違う雰囲気になってたかもしれませんが、白石さんの『百物語』もTV演出家の鴨下信一さんだったから、それはまぁ、いいのかな。私が観たのは2日目で、後半を観た記者によれば、仲代さんは後半からエンジンかかってきたとのこと。
    台詞の多さに慣れているかただけに、仲代さんにリーディング初めてと言う不自然さは感じませんでしたが82歳でこのチャレンジ精神、頭が下がります。リーディング劇ですが、ラストにフィナーレというか、美しいコスチュームでのダンス場面がありました。

    ネタバレBOX

    暴君と悪妻、お互いに苦しめあうのが生きがいみたいな凄まじい老夫婦で、最初は夫が女優の妻の美しさに一目ぼれで結婚したようだが、ストレスを栄養にして生きてる様な異常さ。
    妻は料理を拒否して、食材はゼロ、よく空腹に堪え、餓死しないなと感心する(笑)。
    夫妻は自尊心が異常に強く意地悪で島の嫌われ者らしく、常に他人を見下し、夫妻はコミュニティの中で孤立している。
    毒舌を吐き意地悪をしあいながらも、話し相手はほかにいない。

    二人の住む島に益岡徹演じる妻のイトコが赴任してきて、空気が微妙に変わってくる。
    イトコは二人の間を右往左往してきりきり舞いさせられる。イトコは妻と離婚し娘も手放し独身だが、イトコの妻に離婚をそそのかし、イトコに娘を手放すように仕向けたのもこの夫で、しかもイトコの妻と男女関係があったと知った、人の好いイトコは絶望し、激怒する。
    老妻は時にはイトコに気のあるそぶりをみせ、自分の味方に引き入れようとするがそれさえも気分転換に過ぎないと思えてしまう。

    益岡徹は無名塾で仲代の弟子にあたり、自然に出る夫婦との距離感のようなものがこの役にはふさわしいともいえるのだが、やはり若さが出て、白石が演じる妻と幼なじみで、仲代演じる夫とも同等に話せる男には見えない。

    エンディングのダンス場面でも示唆されるように、険悪な老夫妻は憎みあいながら離婚はぜず、水も漏らさぬ奇妙な連帯感や愛情で結ばれている。この夫にはこの妻、この妻にはこの夫しかいないのであろう。愛憎相半ばと言うにはあまりにも激しい夫婦だが。
    二人ともワルだけど、この勝負、最終的にはやはり妻のほうが上手(うわて)だったということになるのだろうか。

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