田茂神家の一族 公演情報 田茂神家の一族」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 5.0
1-1件 / 1件中
  • 満足度★★★★★

    東京ヴォードヴィルショー、やっぱり面白いね
    東京ヴォードヴィルショーの良さが溢れた楽しい作品。
    多作だけど、このところややアレな感じだった、三谷幸喜さんの作品の中では、出色の出来、面白さであった。

    ある年齢層を対象とせず、あらゆる年代が笑うことのできる作品で、こういうコメディを提供してくれる劇団って、ありそうでそれほど数はない。

    ネタバレBOX

    どこかにある「えぶり村」という過疎の村で、前村長が怪我をしたことから、村長を辞めると言い出したことで、村長選が行われることになった。

    今まで、前村長が圧倒的に強く、無選挙で何期も村長を務めてきたが、その村長が辞めることで、村にとって初と言っていい選挙が行われることになったのだ。

    舞台の上は、立ち会い演説会のようなセット。
    セットと言っても、候補者の折りたたみイスと候補者名を書いた垂れ幕がそれぞれ下がり、中央には候補者が話すためのスタンドマイク、下手には司会者の壇があるだけの、シンプルなものである。

    つまり、劇場の観客がえぶり村の有権者のような設定なのだ。

    そして、立ち会い演説会だけの1幕モノ。時間も舞台の上と客席が同じに進む。
    この設定は面白い。
    シンプルなだけに、戯曲と役者の魅力で見せるしかない舞台だ。

    そして、それは達成されたと思う。

    このところ多作な三谷幸喜さんの作品の中では、出色の出来、面白さであった。
    正直、三谷さんご本人が演出しなくてよかった、と思ったが……(失礼・笑)。

    ゲストを含め、東京ヴォードヴィルショーの役者さんたちの、いい感じに前に出る出方、アクの強いキャラの立て方など、見事に発揮されていた。もちろん、笑いのツボもしっかりと押さえていて。

    シーンの転換ごとに歌が入る。
    そして、選挙の問題やエネルギー問題など、少しだけ風刺も効いている。
    それはなんとなく、井上作品を、ほんの少しだけ彷彿させる。意識したかな。

    立候補者は、全員「田茂神」家の関係者である。司会者も田茂神。
    妻や、弟、息子、娘婿など、前村長の関係者が立候補しているからだ。
    なのでタイトルが「田茂神家の一族」。なるほど(笑)。

    選挙コンサルタントなる人が、ある候補者の参謀として登場して、票読みをしていく。
    どこの地区は誰が強いか、女性票どうかは、年齢層どうなっているのか、と。

    駆け引きをしながら、候補者同士が連携したり、いがみ合ったりしながら演説会は続く。
    候補者の子どもたちも絡んだりしながら、見えたり見えなかったりしていた、田茂神家の関係が見えてくる。
    その都度、票読みの数も変化していく趣向。それに一喜一憂する登場人物たち。

    また、引退するはずの前村長も登場することで、さらにストーリーに面白みが増していく。

    東京ヴォードヴィルショーの、キャラの濃い役者さんたちなので、濃くてギトギト感はある。それでもそれを力押ししてくるのだが、やっぱり笑ってしまう。

    ラストは、「結局誰が村長になるのか?」という点で、ほとんどの観客が徐々にわかっていたと思うが(ストーリーに集中していたら、見落としていた人もいるかもしれないが、うまく気配を消していたと思う)、こういったコメディにはあるパターンの結果となる。

    佐藤B作さんはフル回転。エネルギッシュ。

    一見一番まともに見える、角野卓造さんが中盤から、「バイオマスエネルギー」のトンデモさなど、定石の展開ながら、馬脚を現してくるのがなかなかいい。
    元町長の伊東四朗さんの押さえも効いている。

    ある年齢層を対象とせず、あらゆる年代が笑うことのできる作品で、こういうコメディを提供してくれる劇団って、ありそうでそれほど数はない。
    まだまだ、東京ヴォードヴィルショーの作品にはこれからも期待できる。

    シンプルで面白いから、『アパッチ砦の攻防』のように、再演、再演ってなるんだろうなあ。
    そのときには、また観たいと思わせる。

    しかし、今回、創立40周年記念興行第5弾、一体何段までやるつもりなんだろう(笑)。

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