合理的疑問が生じたため無星
かの傑作「12人の怒れる男」を、三審制度が廃止され陪審員制となった日本に翻案、父親を刺殺したとされる被告の青年が有罪か無罪かを男女各6人の陪審員が議論する物語。
半数が女性であることから一部の設定が変わっていたり、役割分担が変更されたりで「そう変えましたか」「それはあの人が言うのね」など原作を知っていればこその楽しみ方(「七人の侍」を知っていて「荒野の7人」を観た時のような)ができた。
がしかし、四方囲みの客席にしたのはいただけない。
現場見取り図を陪審員たちが見る場面、今まで観てきたものは大きなそれを掲示することで観客にも見せていたのに対して本作ではファイルされた資料を見る演出になっており、観客には見せないのだ。
やはり最大三方囲みにして掲示すべきだろう。
また、大熱演の方から時々トチる方まで役者の力量にかなりの差があったが、この値段ならやむなしか?
ところでチラシも当日パンフレットも「作・演出:仲尾玲二」となっており、レジナルド・ローズの名前がないのはいかがなものか?
この程度の翻案であれば「原作:レジナルド・ローズ「12人の怒れる男」」とした上で「作」ではなく「脚色(あるいは潤色とか脚本とか)」にすべきではないのか?(「作」の前にもう一文字あるならともかく)
以上の合理的疑問が生じたので評決は無罪…いや、評価は無星。
なお、当日受付にあったチケットに添付された予約票には私の苗字が誤記されており(よって受付担当者がまごついている間に私が見つけた)、下の名前を受付担当者に誤読された。(記載はカタカナ)
客の名前をこのように間違えるとは失敬な。
接客ということについてよく考えて、今後はこのようなことが決してないようにしていただきたい。
【追記】
公演ページの説明には「1954年、レジナルド・ローズの手により生み出された名作、『12人の怒れる男』にヒントを得、座付き作家・仲尾玲二により新たに書き下ろされた最新作!」とあるが、「ヒントを得」て「新たに書き下ろ」す予定だった「完全新作」が、何らかの事情により書き下ろせなかったのだろうか?