ブロードウェイから45秒 公演情報 ブロードウェイから45秒」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.5
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  • 満足度★★★★★

    観劇後に満足感と気持ちの良さが残る舞台
    ブロードウエイにある「コーヒーショップ」を舞台にした、グランドホテル方式な物語。
    カトケンこと加藤健一さんが、売れっ子のコメディ俳優を演じている(スタンダップコメディのような芸人かも)。
    温かくて善意に満ちあふれている作品なのだが、その中に演劇に関するチクッとしたものも隠れている。

    ネタバレBOX

    今回の演出はプラチナ・ペーパーズの堤泰之さん。
    登場人物の描き方が、少し、濃い。

    全員が、太マジックで縁取りしてあるように、くっきりとして描かれている。
    なので、海外の作品ということもあって、全体的にややバタ臭い。
    まあ、それはいつものカトケンなのだが。
    カトケンの、英語の訛りの台詞(外国モノで訛りがあるときには、独特の言い回しになる)も、いつもの、な感じ。

    ブロードウェイにある「コーヒーショップ」が舞台。
    コーヒーショップに集う人々が、織り成す物語。

    舞台に立つ人気者、プロデューサー、舞台を目指す者、脚本家を目指す者、コアな演劇ファンに、無名な役者を応援する者など、演劇を取り巻く様々な人が、このコーヒーショップを訪れる。
    つまり、グランドホテル方式な物語。

    うまい人たちが、チームワーク良く演じると舞台はこんなにも楽しいのだ! ということを見せてくれるような作品。
    カトケンさんも、いつものようにグイグイいくのだが、しかし、うまいから全体のトーンの中にうまく収まっているので、変な形で突出してこない。

    どのシーンも見せたい場所がしっかりと示されていて、舞台の上のバランスもいい。

    コーヒーショップのオーナー夫妻を演じた新井康弘さん、田中利花さんがとてもいい。
    加藤健一事務所では常連と言ってもいい、新井康弘さんの雰囲気が作品全体のトーンを生み出しているし、田中利花さんの世話好きなおばちゃん的な佇まいも素敵だった。
    新井康弘さんの台詞が、アメリカンジョーク的ないかにもアメリカンなのだが(「いったい、あといくら払ったら出ていってくれるんだい」と肩をすくめたりするやつ・笑)、それも嫌みなく、無理も感じない。うまく溶け込んでいた。

    中村たつさん、滝田裕介さんが演じる迷惑な客である夫婦への対応が、このコーヒーショップの人の良さを表している。
    そんな人の良さを表すには、コーヒーショップのオーナー夫妻は、うってつけだった。

    黒人の女優を演じた山下裕子さんは、うまい女優であることを匂わせ、なかなかカッコいい。
    もちろん、カトケンさんは、変な訛りを入れつつも、テンポと間がさすが。

    中村たつさん、滝田裕介さん夫婦の姿は、哀しくもあるが、美しくもある。
    粋なラストに、(できすぎだけど・笑)思わず拍手した。
    滝田裕介さんのサムズアップは、決まっていた。

    演劇の周辺に関する物語であり、温かくて善意に満ちあふれている作品なのだが、その中に演劇に関するチクッとしたものも隠れている。
    例えば、カトケンさんが演じる売れっ子のコメディ俳優(スタンダップコメディ?)が、「コメディはセンスや能力なのどではない、呪いのようなものなのだ」「毎日毎日、身の回りの出来事を“これは仕えるんじゃないか?”と考えている」のようなことを吐露したり、どんなに素晴らしい作品であったとしても、客が呼べなければ上演が厳しいことや、俳優になれずに故郷に帰る人のことや、そんなさまざまな真実も語られる。厳しいショービジネスの世界を生きてきた売れっ子のコメディアンも身内には甘いとかも(笑)。

    観劇後に満足感と気持ちの良さが残る舞台だった。

    次回は本多劇場に戻っての、「カトケン・シェイクスピア劇場 ペリクリーズ」。
    劇中でも「シェイクスピアの作品の中では一番面白い(笑)」と言っていた。楽しみだ。
  • 満足度★★★★

    全員善人芝居
    出演者も演技力抜群な方ばかり。カトケン事務所公演。大好きなニールサイモンと聞いて、ずっと心待ちしていた公演でした。

    ニールサイモンらしい、人情の機微が詰まった素敵な芝居でしたが、どうも、心なし、物足りない気分にならないでもない。

    どうしてかなと思ったら、誰もが善人過ぎて、登場人物間に、ほとんど摩擦も葛藤も生じないからかなと思いました。

    実際の社会が殺伐とし過ぎているから、せめて、芝居の中でぐらい、こういう緩やかな人情噺に浸りたいという方には、とてもおススメしたい作品でした。

    ネタバレBOX

    観る前からわかっていたことですが、本当に、出演者全員が、舞台俳優として、実力を兼ね備えている方ばかり結集して、それだけで、大満足な舞台作品でした。

    新井さんは、カトケン芝居に欠かせない重鎮役者さんですが、今回も、芝居を愛する素敵なコーヒーショップのオーナーとして、存在感で、観客を魅せて下さいました。

    倉本さんのテレビドラマで、俳優デビューされた天宮さんも、台詞や佇まいが、今や舞台俳優として確たる地位を占めている重鎮役者さんに成長されたなあと目を見張ります。

    加藤忍さんと佐古さんの、演劇ファン同士の観劇感想会話も楽しく、石田さんや山下さん、田中さんなど、ベテランの心配のない演技にも陶酔しました。

    子供の頃、よく拝見していた滝田さんは、最初の内は、声を出すシーンがなく、このままお声を聞けないのかと危ぶんでいたら、後半、意外な展開があり、あのお声を聞くことができて、嬉しくなりました。

    舞台を観ている間、ずっと和やかな気持ちになれる佳作だとは思いますが、個人的見解で言えば、もう少し、現実の人間社会のように、ストーリーが起伏に富み、葛藤や諍いもあった上での、ハッピーエンドに帰結する人情劇の方が好みではありました。

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