満足度★★
自伝
カムヰヤッセン北川大輔さんの作演出による、北川大輔さんが演じる、北川大輔さんの話。
蟹と温泉で有名な城崎で作られたお芝居。
実際的にどれくらいの期間で製作されたのだろう?
ワークショップ公演の発表作品のような印象でした。
ヘルマン・ヘッセの「車輪の下」になぞらえて、北川大輔さんの半生が語られる。
無邪気だった時代、神童となった時代、挫折した時代、演劇で救われた時代、そして30代を前にした現代。
もう途中からは、完全に「車輪の下」ではなくなり北川大輔さんの話で、北川大輔さんご自身でご自身を演じておられました。
いわゆるメタフィクションというもので、舞台の上で現実の北川大輔さんの人生が語られ、思いが語られ、虚構と現実というよりは、現実でした。
この文章中に一体何度「北川大輔さん」と書いたことか。
それくらい、丸ごと北川大輔さんそのまんまな舞台で、もう芝居という体裁すらとってなくて。
メタフィクションに寄りすぎていて、これは芝居を観に来たつもりで来たら、ちょっと違うかな?という感じでした。
普通に北川大輔さんという人物が、まんまそこにありすぎで。
もう少し舞台として昇華させたものが、観たかったかなと思います。
語られた人生は、演劇人の現実事情が生々しく、演劇人の方には胸に差し迫ったのではないでしょうか。
彼の人生や言い分には、大学時代の過ごし方、母親との接し方、同棲相手との付き合い方、物申したい部分も多々ありつつ。
でもそれは北川大輔さんご自身に物申すということと等しいので、差し控えさせていただきます(笑)
ラストお母さんと一緒に朝日を浴びるシーン、とても美しかった。
その直前に長い長い独白がなければ、もっと響いていた気がします。
独白で間延びしてしまい、残念。
この芝居はまるで懺悔のようだ、ラストシーンのその神々しい美しさに尚のこと思いました。