満足度★★★
もどかしい演出
台詞や構成はほとんどいじらずに、映像や1人2役といった趣向で個性を打ち出した、熱気とスピード感のある3時間越えの上演時間を気にさせない演出でしたが、演出意図が分からない部分が所々にありました。
ハムレットの父の亡霊がガスマスク姿だったり、ハムレットが国外に出される先がイングランドではなくジパングとなっていたり、ト書きにあるファンファーレを軍鑑マーチで表したり、ベルリンの壁崩壊やソ連解体の映像が流されたりと、政治的な含みを持たせていたもののメッセージとして何が言いたいのか伝わって来ず、もどかしさを感じました。
オフィーリアが清純な少女ではなく、ケバケバしい格好をした不良少女的なキャラクターとして描かれていましたが、そのようにした理由が分かりませんでした。
上部には5台のモニターがあり、舞台上や客席のライブ映像を映し出していて(奥の壁面にもプロジェクターで投影)、監視社会である現代を暗示していたのだと思いますが、もう一歩シェイクスピアの戯曲と絡む表現が欲しかったです。
傾斜した張り出し舞台で、一番奥が塹壕のようになっていたり、床下にスペースがあって墓掘りの場で墓として用いたりと、狭い舞台を巧みに活用して様々なシーンを表していたのが良かったです。
ハムレットを演じた河内大和さんは一般的なハムレット像とはかなり異なる雰囲気でしたが、気が狂った振りをする演技が嵌っていて、魅力的でした。