メトロに乗って 公演情報 メトロに乗って」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 3.0
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  • 満足度★★★

    浅田次郎原作のミュージカル
    1つのパッケージ的な作品としての出来は悪くはない。
    しかし、心に響くような共感も感動もなかった。

    ネタバレBOX

    パーシモンホールは初めてだった。
    区のホールとは思えないぐらい立派なホールで、イスもいいし、舞台も観やすい。

    舞台は、歌もダンスも台詞もすっきりしていて、1つのパッケージとして成立していた。
    誰もが納得するレベルではないだろうか。

    主人公の小沼真次役の広田勇二さんは、四季っぽい台詞回しと立ち方だなあ、と思っていたら、やはり四季出身だったし、彼の愛人・軽部みちこ役の美羽あさひさんも、いかにも宝塚という立ち方と歌い方なので、もう少し全体に溶け込むような演出も必要だったのではないかと思った。

    先にも書いたとおり、ミュージカル作品としての出来は悪くはない。
    悪くはないのだが、いかにも「長期公演の中の1回」という、流している感が少し気になる。
    そういう見方をしているせいなのかもしれないが。
    悪くはないが、心に響かないのはそういう理由かもしれない。

    まあ、そもそもこの作品があまり好きではないから、厳しい見方をしてしまうのかもしれない。

    なにしろ、主人公が毛嫌いしていた父親を見直すことになるためだけに、「なぜか」タイムスリップして都合良く、父親と出会い、父親を見直すことになるだけでなく、妻も子どももいるのに、長年の愛人がいて、その愛人も「なぜか」主人公と一緒にタイムスリップをして、彼女はこの世にいなかったという選択をすることで、「不倫はなかった」ことになるという、主人公だけ都合のいい世界が繰り広げられるからだ。
    家庭を捨て、愛人と一緒になる、とまで決意したのにもかかわらず、「何もなかった」ことになってしまうのはどうかと思う。
    それは原作に言え、と言う人もいるだろうが、その作品を選んで上演しているのは、この劇団なのだから。

    さらに、原作とは変えて、主人公の兄の死は「自殺」ではなく「事故」だったようになっていた。
    すべてにおいて、都合がいい、免罪符が与えられているのだ。

    結果として、「主人公自ら選択した」ものであれば、それなりの感動もあったかもしれない。
    しかし、そうではなく、なんとなく、誰かが仕掛けた流れのようなものに乗って過去に遡り、父親との確執を解き、家族を取り戻し、不倫も自ら解消したわけではなく、相手が自らの存在そのものを消し去ることで(母親のお腹の中にいるときに「死ぬ」ことで)、なかったことになってしまって、妻と子どもの家族を取り戻すというのが、どうも納得できないのだ。

    だから、共感も感動もない。

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