満足度★★★
作・演が別なことが裏目に出たケースであるかも知れない。
根本的には時空を扱った作品なのであるが、それにしては物理的詰めが甘い。少なくとも現代物理学で時空を問題化したいなら、観察者が時空とどのような関係を結ぶのかが考慮されなければならない。その点は重要である。何故なら観察者の存在や観察行為が、被観察対象に影響を与えると考えられているからである。どのような場合にどのような影響をどれくらい与えるのかを係数化する程度のことは最低必要である。物理的問題を扱っているにも拘わらず、この点をキチンと作品化していないので、作品としての統一力に欠け、各プロットの提起した矛盾は、行きどころを失って漂っているのであるが、その実相をキチンと表現することもシナリオレベルで為されていない為、総てが中途半端に終わっている。レトリック面では観るべき点もあるのだが、論理が通った上でのレトリックでなければ観客への訴求力は弱いと知るべきである。作家も兼任している役者達は頑張っているのだから、以上の事に留意して、磨きを掛けて欲しい。そして、エクスキューズを程ほどに、状況を創造的に背負うことを考えて欲しい。