黄昏にロマンス ―ロディオンとリダの場合― 公演情報 黄昏にロマンス ―ロディオンとリダの場合―」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.8
1-4件 / 4件中
  • 満足度★★★★

    良い芝居には人が集まるを実感
    いやあ、驚きました。実は、このチケット、9月に早々と予約していたというのに、雑事に追われ、発券をコロッと忘れていて、仕方なく、当日券に1時間45分前に並んだのです。そうしたら、私の前に既に12人が並んでいらして、その後も列は果てしなく続くのです。その皆さんの年齢に驚きました。
    還暦の私さえまだひよっこと思える程、後期高齢者の方々が杖をついて、列に並んでいるのです。
    ある方は、「一度観たけどまた観たくて…」、またある方は「、関西からの上京のついでに、素敵な芝居が観たかったから…」と、同じ関西の方と意気投合して、長時間の待ち時間も苦にならない様子で、観劇を心待ちしていらっしゃる。
    観劇前に、こんな素敵な光景を見て、演劇ファンとして、至上の喜びを感じました。

    熟年の平さんと渡辺さんのコンビは、カトケン事務所の加藤さん、戸田さんコンビよりは、ドラマチックな展開ではなく、静かに心の交流を深めて行くといった、日常の機微を丁寧に再現される演じ方で、味わい深い舞台でした。

    渡辺さんが、ご主人様を亡くされたばかりなことを知っているので、より、胸に響く作品になったのかもしれません。

    ネタバレBOX

    作品の設定年齢よりは、たぶんご高齢なお二人ですが、それだけに、静かにお互いの心が近づいて行く様を、品よく演じていらっしゃいました。

    カトケンの舞台の方が、二人の掛け合いがドラマチックに描かれ、退屈しなかったので、時々、物足りなく思う瞬間もあったのですが、元の脚本が秀逸だし、これからも、様々な組み合わせで、この芝居が上演されたら嬉しく思います。

    昔観た、松緑さんと杉村さんのコンビも印象深かったことを懐かしく思い出しました。
  • 満足度★★★★★

    とても素敵な舞台
    いずれ人は1人になっていくにしても、こんな出会いがあれば、明日も明後日も、その後も、きっと楽しくいられる。
    それを感じることは、多くの観客にとって、素晴らしいプレゼントではなかっただろうか。

    ネタバレBOX

    平幹二朗さんと渡辺美佐子さんの2人芝居ということで、気合いを入れてチケットを予約し、公演を楽しみにしていた。

    可児市文化芸術振興財団主催の公演が吉祥寺シアターで行われるときには、観客に可児市のバラがプレゼントされる。
    今回も、きれいにラッピングされた、赤いバラが一輪ずつ座席に置いてあった。

    この舞台にふさわしい、美しいプレゼントだった。

    舞台が開くまでこの戯曲の舞台を見たことはないと思っていた。
    しかし、幕が開き、平さんが登場したとたんに思い出した。

    数年前に加藤健一事務所の公演で見た『八月のラブソング』だ。
    こちらは、加藤健一さんと戸田恵子さんの2人芝居であった。

    設定も内容もまったく同じだ。
    8月のある日、バルト海に面したリガ湾のほとりにあるサナトリウムで、院長と患者という立場で出会う2人の1カ月足らずの物語。

    あとで知ったのだが、杉村春子さん、越路吹雪さん、黒柳徹子さんも、この作品を演じたことがあるという。

    しかも、杉村春子さんの舞台は『ターリン行きの船』、越路吹雪さんは『古風なコメディ』、黒柳徹子さんは『ふたりのカレンダー』と、タイトルがすべて違う。
    こういう作品も珍しいのではないだろうか。

    加藤健一さんと戸田恵子さんの『八月のラブソング』では、加藤健一さんが、とてもクセがあるサナトリウムの院長を演じていて、その頑なさを戸田恵子さんが演じるリダがほぐしていくといった展開だった(加藤健一さんが教授などのインテリを演じると、大体このようなクセのある人になる・笑)。したがって、2人がぶつかり合うという前半であった。つまり、笑いもそれなりになる(コメディとしているので)。

    対して、この公演での平幹二朗さんは、お茶とお菓子で読書をしている、というようなシーンも、品良く、かつスタイリッシュに決まり、年老いたインテリという風情に溢れていた。
    なので、『八月のラブソング』のようなぶつかり合いではなく、サナトリウムの院長が、静かに暮らしていたところに、元気のいいおばちゃん・リダがやって来て、波紋を投げかける、という展開で、その波紋が静かに平幹二朗さん演じる院長の胸に届くという品のようなものを感じた。

    「元気のいいおばちゃん」と書いたが、それは院長との対比であり、渡辺美佐子さん演じるリダも自然体で、町のおばちゃんの上品さはある。
    彼女の、1つひとつの行動や発言が愛らしいのだ。

    だから、院長が心ひかれていく、という展開も無理なく受け入れられる。

    とにかく、この公演でのお二人の様子は、さすが! としかいいようがない。
    軽いコメディ的なところもあるのだが、その間合いが、実に絶妙で、爽やかな笑いが生まれてくるのだ。

    2人には、戦争が、まだ色濃く残っている。
    院長は、この地で戦死した従軍医師であった妻のことを偲び、この地に移り住んで暮らしている。
    リダも終戦間際に一人息子をドイツで亡くしている。
    このエピソードへの導入がうまいのだ。

    大きく笑わせるわけではないのだが、笑顔の先にある悲しみが、じんわりと伝わってくる。

    舞台の設定は、1968年。
    ベトナム戦争の真っ直中であり、ソ連関連では、プラハの春が起こって、ワルシャワ条約機構軍がそれを蹴散らしに介入した。
    そんな戦争や、その影がちらつく中での、先の戦争を取り入れた設定ではなかったのだろうか。

    まあ、舞台の上では、それを匂わせることも、当然なく、歌やダンスも素敵だったし、セットも色合いといい、舞台を回転させて変化を付けるというのも効果的だった。

    ちなみに、『八月のラブソング』では、院長の心象風景なのか、灰色の瓦礫のような背景のセットで、気分は少し暗くなったのだが……。

    年を取って、一人でいることは苦痛でもなんでもない、と思っていた院長が、同じく年を取っているのだが、命をキラキラと輝かせているような女性に出会い、思慮と品のある恋に落ちるというのは、多くの観客にとって、素晴らしいプレゼントではなかっただろうか。

    いずれ人は1人になっていくにしても、こんな出会いがあれば、明日も明後日も、その後も、きっと楽しくいられるのだから。
  • 満足度★★★★★

    期待通りの二人芝居
    楽しみにしていた二大名優のふたり芝居、セリフは誰でも経験する何気ない日常会話の積み重ね、絶妙な間合いと艶やかな声音の2時間強の舞台に引き込まれた。明るく簡潔な装置、美佐子嬢の可愛らしい衣装やしぐさ、平幹氏のきりっとした姿勢とこれまた紳士らしいいでたち、視覚、聴覚ともに満足させてもらった舞台だった。
    名優が演じる舞台には豊かな時間が流れていた。

  • 満足度★★★★★

    とてもおしゃれな二人芝居
     最近毎年観ているala Collectionに平幹、渡辺美佐子の二人芝居ということで初日に吉祥寺に出かけていきました。迂闊にも、観劇まで気づいていませんでしたが、昨年カトケンと戸田さんで本多劇場で観劇した『8月のラブソディ』と同じアルブーゾフの『OLD WORLD』(英訳)からの翻訳劇でした。
    ロシア演劇には残念ながら疎いのですが、ソ連時代とは想像できないオシャレな恋愛劇(2幕8場、休憩15分の2時間10分)です。
     1968年の8月の約1ヶ月間のロディオン(サナトリウムの院長。海外一人娘がいる。最愛の妻は独ソ戦で亡くなっている)とリダ(元女優さん。今はサーカスの切符売り?。前夫との一人息子を戦争で亡くしている。)の出会いから別れ(最後は別れられずに戻ってくる)の物語。
     本当にスマートな会話劇(戦時中の二人の苦労や悲しみ、亡き妻の墓に花を欠かさない等のエピソードは、単なる恋愛劇以上のものにしています。)で、二人のゆっくりとした関係の変化が小気味よく、劇中のダンスシーンには、客席が拍手がおこる素敵な舞台でした。

このページのQRコードです。

拡大