満足度★★★
多様な表現
最終選考に残った6人の振付家の上演会で、それぞれ異なる作風が現れていて、コンテンポラリーダンスの多様性を楽しめました。
捩子ぴじん『no Title』
男2人で4つ打ちビートに合わせたヒップホップ的な同じ振付で踊りながらも異なる質感が現れている様を見せ、後半では同じオノマトペや形容詞、名詞による振付がインド舞踊的に変容するという構成で、振付に対して批評的な意識が感じられました。
スズキ拓朗『〒〒〒〒〒〒〒〒〒〒』
以前に発表した『THE BELL』を制限時間に合わせてリメイクした作品で、ストーリー性を無くして歌とダンスの馬鹿馬鹿しくも精密なコンポジションとなっていましたが、エモーショナルな高まりがあまり感じられませんでした。
木村玲奈『どこかで生まれて、どこかで暮らす。』
男1女2のトリオ作品で、前半はバラバラに動き、中盤でユニゾンとなり、次第にまたバラバラな動きとなって最初のシーンに戻る構成で、音楽は用いずに電話の会話や具体音を流し、内省的なムードが印象的でした。もう少しベテランのダンサーが踊った方が合っていると思いました。
塚原悠也『訓練されていない素人のための振付けのコンセプト001/重さと動きについての習作』
仰向けに寝ている人の上に人が乗り、傍らに置かれた太鼓が鳴らされると照明が消えて、別の1人が出て来てカメラで写真を撮るというシークエンスが繰り返され、暴力性とユーモアがユニークに表現されていました。終演後に作品の仕様書が配布され、振付の定義について考えさせられました。
川村美紀子『インナーマミー』
女4人が爆音のノイズミュージックとストロボが点滅する中、カオティックに踊って始まり、ファミリーマートの入店アラーム、緊急地震アラーム、JRの発車ベル等、様々なアラーム音に合わせたソロが次第にダンスビートにミックスされ、終盤にはラジコンに乗せられたキューピー人形が何体も登場する構成で、ダイナミックな振付と派手な照明効果で引き込まれましたが、まとまり過ぎている様に感じました。
乗松薫『膜』
性的なイメージを喚起する作品で、赤と緑を基調にしたビジュアルが鮮やかで、上から吊り下げられたハンガーとフォークを組み合わせたオブジェや中盤で流される映像も印象的でしたが、構成やムーブメントにダンスとしての魅力があまり感じられず、美術パフォーマンスの様に見えました。
※川村美紀子さんが「次代を担う振付家賞」と「オーディエンス賞」を同時受賞しました。