満足度★★★★★
飴屋法水渾身の「授業」
飴屋法水とそのパートナー、そして2人の間にできた小1くらいの娘。
そんな飴屋一家が飴屋一家自体を演じ、人類全般、生物全般を視野に収めつつ一家の来歴を説いていく“飴屋流ヒト学講義”といった趣のセミドキュメント的公演。
この素晴らしさを一体どう伝えればいいだろう?
父、母、娘それぞれの独白と家族間の対話によって説かれていく、飴屋家ならびにそれをくるみ込む人類全般、生物全般のヒストリーは、平易なのに力強い言葉の数々とそれに随伴する音響の奇蹟的なコラボによってズシンと胸に突き刺さり、一時間強にわたって私を放心させ続けた。
そして、シャッター全開の会場側面から見えた夏の下町の美しかったこと。
さらに、たびたび外にまで躍り出て夏の白光のなか遊び、演じる飴屋一家の美しかったこと。
演劇作品の一部と化した町並みが普段歩く町並みとは相貌を異にし、ここまで美しく見えるのは一体どういうわけなのか!?
飴屋一家の放つ光は私の人生をも照らし出し、少なくとも本作を観ている一時間強の間、私は散文的で取るに足りないこの私のこの人生というものが愛おしくて愛おしくてたまらなくなり、必ずや来るこの生の終わりを思ってやりきれない気持ちになったのだ。