力作。
文字通り”総力を結集した大作でした。ミュージカルシーンの振り付けや曲も全てオリジナルで、アトリエ公演でありながら商業演劇に比肩する規模で公演を行えてしまうところが、学生団体ならではの強みであり魅力でもあるのかなぁと。歌唱やダンスなど個々の技量のバラツキは惜しいところではあるけれど、たぶん今この時だからこそ出来る舞台だったんだと思う。
上演時間:110分
満足度★★★
老婆心ながら。。。
『モモ』をミュージカルにすると聞いて正直いって期待していなかった。だが観終わってみると『もう一度原作を読み返してみよう』と思わせてくれたということでこの企画は幾分か成功だったように思われる。
もしこの作品を小学生の低学年や、幼稚園児にみせることが出来たなら彼らにとって素晴らしい観劇体験となるのではないか。
以下個人的に感じたことを書かせていただく。見当違いということも多々あるだろうがご容赦ください。みなさまの忌憚なき意見を伺いたいです。
まず、この上演は観客層は同年代やそれより上の保護者世代が基本となることが予想できるがそのわりには、脚本、演出が薄いものとなってしまったのが残念である。特に二時間という上演時間にしては表面的にしか受け取れない作品となってしまっていた。もう少し『モモ』という作品に足を踏み入れてはいかがだろうか?
このような名作を上演するときに、観客は皆さんの踏み込んだ解釈を期待する。
特に『モモ』は単なる児童文学ではなく、圧倒的に暗喩的表現の詰まったむしろ大人が読む児童文学といえる。その点がとても残念だった。
例えば、灰色の男たちの存在である。おそらくエンデは彼らを単なる悪役として存在させてなく、時間を失い個性をなくした民衆との相互性を作り出している。
服装を統一していたのは良いが、ダンスの部分で個性が強く出てしまい、非常に残念だった。
(悪役を悪役として存在させない考えは現在主流なため、もしかしたら若い皆さんの方がより面白い解釈を持たせてくれるかもしれない。)
他にも作品を知る上でミヒャエル・エンデがどういう人物かを知ることも重要になってくる。戦中をドイツで過ごしたということだけでも解釈は様々なものに広がるのではないか。いまの世の中調べればいくらでも出てくる。
音楽に関して言えばどれもメロディが聞きやすく素晴らしかった。
しかし、1つ帰りに口ずさめるような簡単な(もしくはワンフレーズの繰返しとなるようなのを様々な場面に)盛り込むとより素晴らしいものになったのではないかと感じた。
もし次回があるなら(是非観てみたいので)いくらか深めた作品を提供してくれることを願っている
満足度★★★★★
原作のテイストを立体化
ミヒャエル・エンデの人気作、「モモ」をミュージカル化した舞台だが、学生だけで演じ、登場者も多くの世代、果ては亀に迄及ぶ今作のテイストを巧みに取り出し、表現して物語に陥入させてくれたのは、この劇団の力だろう。いつもながら、学生演劇の横綱を張る明治大学の演劇である。先ず、姿勢が良い。如何にも若者らしい工夫と初々しさ、観客に対する態度と距離の取り方の適正が心地よい。無論、脚本も原作の本質をしっかり、自分の頭で捉えているし、演出は様々な個性を纏めるのに苦労したであろうが、コラボレーションは良い感じにハーモニーを奏でている。キャスティングも良い。殊に、モモを演じた永野さんの、子供の持つちょっとしたためらいや気恥ずかしさの表現が素晴らしい。脇では、ジロラモを演じた木村くんの演技、身体能力の高さも光った。更に、前説とマイスターを受け持った稗苗くんの落ち着いた演技もグー。他にも歌をオリジナルで作っている手の掛けようや、舞台を立体化させる為の工夫が見られた。一々、名は挙げなかったが出演者の演技レベルも高く、ダンスの時の体の切れも良い。このグループの今後にも期待したい。