満足度★★★★★
薔薇 記念 生まれた土地
3つのラジオドラマとして書かれた作品のリーディングを拝見。「薔薇」「記念」の演出は、shelfの矢野 靖人氏。「生まれた土地」の演出は青年座の須藤 黄英さんである。
上演中なので、余りに詳しいことは書かない。一例として「薔薇」について書いておく。
所謂、読みに拘ったリーディングではない。無論、それ以上である。科白を役者の身体や生活に落とし込んで、自然に動くように仕組まれた演出である。従って、頗る高度な演出でありながら、非常に分かり易く役者たちの素を舞台化し得ている。スタニスラフスキーでいえば、滲み出るような役作りができているということだ。のびのびと演じているので、間口が広いのだが、勘所をキチンと押さえているので、隙は無い。
役者は、演ずる時には、無論、存在感を出さなければならないが、自分にスポットが当たっていない時には、様々な対応が要求される。存在感を消すこともある。弱めたり、邪魔にならないように控えたり、ケースバイケースでスポットの当たっている役者をひきたてながら千変万化のポジショニングを要求されるのであるが、その辺りも非常に気の利いた、知的でしかも豊かな感受性を示す舞台になっている。