満足度★★★
女の決断
癌に冒された女性の田舎村での1週間の療養の期間を回想シーンを交えながら描いた作品で、地味な話ながらも人間関係や生き方について考えさせる深みのある内容でした。
癌が再発しカウンセラーの勧めで今後をどうするか考える為に1週間コテージに1人で暮らし、テープレコーダーに自分の思いを赤裸々に吹き込んでいると生活をしているところに修理工の男が訪れることから考え方が変わって行く物語で、闘病ものにありがちな安易なお涙頂戴的展開が無く、じっくりと人の感情を描いていて押し付けがましさが無いのが良かったです。
性的な話題も多いのですが、所々で引用される詩の効果もあって、お高くとまることのない快い品の良さが感じられました。1幕の終盤でイプセンの『人形の家』を彷彿とさせる台詞のやりとりがあり、最後の展開を予感させていたのが戯曲の構造として興味深かったです。
とても優しいけど、その優しさが相手への配慮ではなく自身の為に感じられる夫と、相手への思いやりがあるにも関わらず、表現がストレート過ぎな修理工の2人の対比が印象的で、終盤でその2人が鉢合わせする修羅場のシーンでは当人達は真面目なのに端から見るととても滑稽で、人間の感情の面白さがユーモラスに描かれていました。
前半は対話シーンがあまり無くてテープレコーダーに話し掛ける体での一人芝居状態が長く続くのですが、保坂知寿さんの演技が魅力的で引き込まれました。
音楽や照明や美術も主張し過ぎることなく的確に役割を果たしていて良かったです。劇中でラジオから聞こえて来る設定で流れる曲の歌詞が、登場人物の心情と重ね合わされていたのが、常套的な手法ながらも効果的でした。
満足度★★★★
「休暇」の意味も素敵
栗山民也さんが演出される、200席に満たない小劇場での本格的なストレート・プレイです。日本初演。
がんに冒された中年女性が田舎のコテージで1週間の“隠遁”生活をします。そこに人生を変える出来事が!清楚なイメージのチラシからは想像がつかなかった、衝撃的な展開に心乱されました。闘病の記録をともに追いながら、夫婦とは、人生とはと考えさせられる、とても面白い戯曲です。