満足度★★★★★
なんて緻密な脚本
(ちょっと遅くなった感想ですが・・・)
突如、観劇にハマって、ここ1ヶ月で10本以上の演劇を観ましたが、今のところ、この作品が一番面白かったです。劇中のあらゆる所作が伏線となり、無関係そうな登場人物が隈なく紐付いている・・・ちょっとやりすぎなんじゃと思えるくらい無駄なく話が構成されていて、よく練られた脚本だなと感じました。
今後もこの方の作品を見ていきたいと思わせる作品でした。
満足度★★★★★
刈馬演劇設計社「76をめぐる暴言」観ました
前作「クラッシュ・ワルツ」で、その圧倒的な緻密さと人の業に圧倒されました。
はたして、あの作品の後で、刈馬さんはどんな球を投げられるのだろうのかと、ちょっと不安を持ちつつ劇場へ。
不安は杞憂。観ていてお腹が痛くなった。。。
正気と狂気がせめぎ合う精神バランス。
感情を、最初に爆発させる人・最後に爆発させる人・最後まで爆発させない人、さまざまな社会性…全員が、激情を体内に押し込めながら、舞台上で他者や家族と共に生きている。
一度壊れ再構成された家族らの、舞台上に現れることのない人物を軸にした、繋がりへの渇き。
家族なのに部外者、部外者なのに家族という対比の際立つキャラも。
家族でも分かり合えず、部外者ではより分かり合えず。
そして、それでも一筋の光を見せる方向への、物語の収斂。
リアル志向のセットの中で、終始、拘束された人物が舞台上の同じ位置に固定されていたのも、観客の感覚に影響があると思う。
セットを取り囲む無数の枠が、モニターにも口(くち)の字にも見える。
繋がりなき、顔のない声の圧力は、現実をも傷つける。
廃墟文藝部「MOON」、水素74%「荒野の家」、刈馬演劇設計社「76をめぐる暴言」と、このところ立て続けに家族劇を観ています。
ひたすらに崩壊へ向かう前者2件には吐き気を覚え、後者1件はお腹が痛くなりました。
思うにこれは、「この人間関係を理解したくないか、否か」「この人たちと、一緒に生きられそうにないか、否か」の違いかと。
やはり、私は物語に、真実のどぎつさだけでなく、ほんの少しでも光が欲しいのだなと思った。
(ハイバイ「ヒッキー・カンクーン・トルネード」や「て」のように)
このところの刈馬演劇設計社には、刈馬さんの人間観・社会感覚が如実に現れていると思います。
一筋縄ではいかないけれど、その内容は至極真っ当。
狂っているように見えても、みんな人間として、正気を保って生きている。
だからこそ、苦しみはあっても嫌悪感はないのでしょう。
今後も期待します。
〈おまけ〉
星の女子さん×刈馬演劇設計社コラボ・連続短編上演「トマトの原罪」、前後編ともに観ました。
前編(刈馬さん作)、のびのびと書いてて楽しそうなw密室サスペンス。
後編(渡山さん)、笑いを交え迷走しつつ、ダーク神話な展開へ。
本編の空気をあっさり塗り替える短編二人芝居コラボ、シリーズ化希望(笑)