平成25年12月歌舞伎公演「主税と右衛門七」「弥作の鎌腹」「忠臣蔵形容画合」 公演情報 平成25年12月歌舞伎公演「主税と右衛門七」「弥作の鎌腹」「忠臣蔵形容画合」」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.3
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  • 満足度★★★★

    知られざる忠臣蔵
    「知られざる忠臣蔵」と題して、観たことのない忠臣蔵を3本。
    歌舞伎座では、2カ月連続で仮名手本忠臣蔵を上演しているので、こちらではこうしてみました、という趣向が楽しい。

    ネタバレBOX

    1つめは「主税と右衛門七―討入前夜―」。
    ともに10代の赤穂浪士が主人公。
    討ち入り前日の13日、右衛門七は、商家の一人娘に見そめられ、自分も憎からず思っていたので、初めて知った恋に気持ちが揺れる。主税は、死ぬことが恐いと打ち明ける。
    二人は酒を飲んで気持ちを切り替えようとするのだが、内蔵助がやってきて、武士の本道を解き、そんな二人をたしなめる。
    しかし、たしなめる内蔵助も、若い彼らを想い、「武士とは、悲しいものだ」の内蔵助の台詞。
    グッとくる。

    若い二人の演技はまだまだなのだが、それが逆にこれから死地に赴く若侍のそれと重なってきて、若さが最後の輝きに見えてくる。
    中村歌六の内蔵助の重さが効き、物語を締める。
    そして、乳母のお粂を演じた中村京蔵さんが素晴らしい。

    2つめは「秀山十種の内 弥作の鎌腹(やさくのかまばら)」
    真面目が取り柄の百姓・弥作の弟は、侍になって、赤穂浪士の一人。
    弥作は、恩義ある代官と弟の板挟みになり、弟の秘密を守るために代官を撃ち殺し、その責めを負って、侍のように自ら腹を切るという物語。
    鎌で腹を切るとからこのタイトルが付いた。
    中村吉右衛門の弥作は、その姿が立派すぎるので、ただの百姓には見えないのだが、実直な感じがよく出ている。したがって、弥作の苦悩がよく伝わってくる。そして、鎌で腹を切るところなどは、悲痛なのに、滑稽味もあるのだが、泣けてくる。

    3つめは「忠臣蔵形容画合―忠臣蔵七段返し―」
    仮名手本忠臣蔵の大序から七段目までを、趣向を変え、パロディにしたような作品。
    オリジナルの仮名手本忠臣蔵をある程度知らないと、何がなんだかわからず、あまり楽しめないだろう。
    早変わりや、驚きの展開、仮名手本忠臣蔵の一幕のその後、人形遣いに踊りなど、次々に繰り出され、とにかく面白い。

    満足度の高い3本であった。

    今年は平均月1で歌舞伎を観た。
    来年もこのペースになりそう。
  • 満足度★★★★

    ゴーヤ
    年末になって、ここに歌舞伎関係の感想をまったく書き留めていなかったことに気付いた。歌舞伎納めはこの作品だった。
    個人的には、11月12月の歌舞伎座の忠臣蔵より面白いと思った。仮名手本はもうお腹いっぱいだから。
    本編を知った上で「忠臣蔵形容画合(ちゅうしんぐらすがたのえあわせ)」を見ると可笑しさが増す。

    最近白塗りがよく似合うおっとり美人さんになった米吉の「婆や」のアクセントが「ゴーヤ」と同じだったのは、あれが正しいのかどうか、通の人に尋ねたい。

  • 満足度★★★★★

    バラエティ豊かで楽しめた外伝
    歌舞伎座の本家「仮名手本忠臣蔵」に対し、国立は忠臣蔵外伝ともいえる三作を並べたが、どれも外れなしの年の暮れらしい好企画で楽しめた。

    吉右衛門を座頭に、その親戚である芝雀や歌六・又五郎兄弟、錦之助と一門の若手゚がそれぞれ活躍の場を与えられた。

    そのルーツは三代目中村歌六で、その子息の初代吉右衛門や子福者の三世時蔵、17代目中村勘三郎の3兄弟が今日歌舞伎界全体の中でも層の厚い人材の基礎を築いたわけだから感慨深い。

    今回、吉右衛門は初役で「弥作の鎌腹」に主演したが、これは初代吉右衛門から17代勘三郎へと受け継がれてきた演目。

    先年亡くなった18代勘三郎は、初代吉右衛門譲りの父17代目勘三郎の当たり役を受け継いでいたので、この役も吉右衛門から勘九郎にいずれ伝えてほしいところだ。

    意外なようだが、映画俳優だった初代錦之助は初代吉右衛門の芸風を大切にし、17代目勘三郎や先代又五郎が生前から高く評価していたという。

    初代錦之助が収集した膨大な歌舞伎関係の蔵書は播磨屋と萬屋の若手たちに譲られ、研鑽に活用されている。

    「主税と右衛門七」は、その初代錦之助と親交が深かった脚本家の成澤昌茂の作。初演は松竹の大谷竹次郎会長が東映の錦之助映画を観て若き脚本家も成澤を気に入り、新作歌舞伎を依頼し、当時まだ10代の現幸四郎と吉右衛門兄弟が演じた。ここにも初代錦之助と梨園の子供たちの絆がつながっているのだ。

    ネタバレBOX

    「主税と右衛門七」 家老、大石内蔵助の嫡子である主税(隼人)と、軽輩の家に生まれた右衛門七(歌昇)。右衛門七は主税の口添えで前髪の若輩ながら義士に加わったが、父も母も自害した犠牲の上に右衛門七の願いはかなったのだ。

    討ち入りを目前に、主税は死への恐怖と生への未練が胸をよぎり、自分が口添えしたために右衛門七を討ち入りに追い込んだのではと問う。

    右衛門七を一途に恋い慕う商家の娘お美津の米吉が可憐でいじらしく、新歌舞伎の女形の声色とも違い、女子高校生のように自然な発声が新鮮。思いを受け止められずに本心も告げられぬ若者の苦悩と哀れさを歌昇も的確に表現。

    隼人の主税はお坊ちゃん育ちらしい無神経な残酷さものぞかせる。歌六の内蔵助が若者の心の揺れに理解を示しながらも武家の厳しさを諭す包容力をみせた。

    「弥作の鎌腹」  初代のような愛嬌がないと言いつつ、どうして吉右衛門は愛嬌と哀れさを兼ね備えた初役とも思えぬ堂に入った演技。

    弥作の弟、弥五郎の又五郎が義理と忠義の板挟みをじっくりと演じ、百姓ながら兄を敬う心根を丁寧に表現。

    「忠臣蔵形容画合」 忠臣蔵七段返しということで、仮名手本の大序から七段目まで名場面を舞踊仕立てで見せる。

    大序の若狭之助、判官、師直から三上戸の三人奴に変わり、又五郎、歌昇、種之助親子三人で楽しく踊る。

    歌六の与市兵衛と定九郎の早変わり、米吉、隼人の美しいおかる勘平、歌右衛門の面影を残す魁春も顔世、冨十郎の口跡のよさをしのばせる鷹之資の力弥。

    六段目と違い飄逸なおかやの東蔵と盆踊りに興じる純朴な百姓の歌昇、種之助。仮名手本の七段目でも同じ配役を経験している錦之助の平右衛門、おかるの芝雀が人形振りで演じ、吉右衛門の由良之助が最後に登場して引き締め、幕が下りる。






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