Fragments-枕草子- 公演情報 Fragments-枕草子-」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 5.0
1-1件 / 1件中
  • 満足度★★★★★

    環境との繊細な照応
    1457年に建てられた旧燈明寺本堂の建物の建具を開け放ち、外の庭園を借景として舞う作品で、非常にゆっくりした動きの中に確固とした、しかし押し付けがましくない美意識が現れていて素晴らしかったです。

    静かに音楽が流れる中、着物姿の渋谷はるかさんが向かって右のスペースに座り『枕草紙』の有名な季節毎の好ましいものを挙げていく段を読み終わった所で、ボヴェ太郎さんが建物側面の縁側を通って開口部をゆっくり横切り、正面に回り込んで庭園の方を向いて長く佇んだ後に中に入って舞いました。渋谷さんの座る姿と同じ姿勢を取り、座ったまま踊るシーンでは空間の質が変わって感じられました。終盤ではボヴェさんの最初の登場シーンが繰り返され、『枕草紙』の文章と相俟って巡る四季を想像させました。

    照明を用いずに自然光のみで、鳥や蝉の鳴き声が響き、爽やかなそよ風が流れる中、その環境に寄り添った静かながら密度のある動きが美しかったです。とても繊細なパフォーマンスで凛とした緊張感がありつつも観ている人の負荷にならない柔らかさが感じられました。
    藤色の衣装に現れるドレープに光が当たって現れる、滑らかな陰影と照り返しが美しかったです。

    渋谷さんの朗読はウィスパー的な声色も用いた優しい声で適度な強弱をつけていて、とても魅力的でした。

    あまり展開らしきものもないので長く感じつつも、いざ終わるとあっと言う間だった様な感覚が残る、不思議な時間感覚が印象的でした。

このページのQRコードです。

拡大