満足度★★★★
闇と静寂
シェイクスピアのソネットを下敷きにして作られた作品で、シェイクスピアが生きていた時代の夜をイメージさせる闇と静寂の中に上品な色気が感じられる、密度の高い70分間でした。
暗闇の中で帯状に照らされた部分を首藤康之さんが舞台奥から手前にゆっくり歩いて来て、観客に話し掛ける様な動き(少しだけ台詞もありました)が次第にダンス的な表現になり、舞台奥に設置された鏡台の手前に座る中村恩恵さんと踊るところから展開していくシークエンスが3回繰り返される構成でした。
1回目はクラシックバレエ的なムーブメントを多用した優雅な雰囲気、2回目は服を着せたトルソーとデュオを踊ったり、道化的な動きがあったりとユーモラスな雰囲気、3回目は同じ髪型・服装をして鏡像の様なユニゾンを踊る不思議な雰囲気、とそれぞれのパートで異なるテイストが感じられました。
どのソネットに基づいているのか具体的には提示されないので、テクストとダンスの関係性については良く分かりませんでしたが、精密に身体をコントロールして空気の量感を感じさせるダンスが素晴らしかったです。派手さはないものの、無駄の無い、研ぎ澄まされた動きやポーズが美しかったです。
広い床を局所的にしか照らさない照明が闇の空間の存在感を強調し、基本的に絶えず鳴っている音楽も逆に静けさを際立たせていて、印象的でした。
一番最後は音も光も完全になくなる終わり方だったのですが、無の状態を味わうには早過ぎるタイミングで2人が捌ける物音が聞こえたのが残念でした。せめてあと3秒待って欲しかったです。