四畳半ベンチプレス 公演情報 四畳半ベンチプレス」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.4
1-9件 / 9件中
  • 満足度★★★★★

    苛立ちと自己嫌悪
    中高生だった、あの頃に感じていた、言葉にできない、そういう「何か」をうまくトレースして見せていた。

    自分自身の「何かわからないモノ」に対して苛立ってしまっている。
    視野の狭い世界にいるからだ。
    今だから、それがよくわかる。

    小松台東、凄くいい!

    ネタバレBOX

    「宮崎の不良でも優等生でも孤独でもない高校生のぼく」が主人公の物語。
    つまり、大多数の「普通」の高校生の話。

    まさにそれに尽きる。
    煙草は「今まで吸ってなかったのだから、今吸うともったいない」という主人公の誠人の感覚が好ましい。別に優等生だから吸っていないわけではないのだ。

    中高生の頃は、うまく言葉にできない、変なモヤモヤを抱えていた。
    多くの人が、たぶんそうだったのではないかと思う。

    就職・進学という進路も決めなくてはならない。
    漠然とした「夢」はある。

    主人公の誠人にも、叶うはずのないレスラーへの夢がある。「身長が足りない」など理由をつけて自分で諦めている。
    しかし、諦めているのに、「進学か? 就職か?」と聞かれれば、夢のほうも顔を出してしまう。
    「どするのか」とせかされ、母親からは「大学に行け」と言われる。

    そんな不安定な時期、「言葉にできない」そういう空気を舞台の上に表現していたと思う。

    誠人の一番仲の良い友人の正憲は、どうやらイジメを受けているようだ。
    身体のアザや汚れたシャツがそれを示している。
    彼は、誠人とは話はできるのだが、ほかの人とはうまく話すことができない。

    学校から近いということで、たまり場にしようとしていたクラスメイトの剛士も、嫌なヤツかと思っていたら、実は誕生日に家族もいない自分の家には帰れず、誠人の部屋に転がり込み、泊めてほしいと言う。煙草は自分を隠すためのものだったのではないだろうか。
    家が近いから、というよりは、「普通」の誠人にシンパシーのようなものを感じていたのかもしれない。
    そして、誠人と母のやり取りに、自分が手に出来ていない家庭を見てしまったのだろう。

    その剛士を好きな浩子は、友だちがいないことを認めたくない。
    浩子が友だちだと言う1コ下の早苗は、実はみんなと同じ年齢で、訳あり。

    それぞれにそれぞれが不安定になる、微妙な背景がある。
    しかし、それをクローズアップして見せるわけでもないし、自ら言い出すわけでもない。
    誠人を含め、だれもが自分の頭の上のハエを追うのが精一杯なのだ。

    その、一杯一杯の感じがよくわかる。
    今思い出せばなんのことはない出来事や状況であったとしても、その時には、本当に大変なことだったからだ。

    そのもどかしい感じが舞台の上に溢れていた。
    誠人の苛立ちは、ホントによくわかる。
    自分の部屋をたまり場にしてしまった同級生たちに対して苛立っているのではなく、本当は自分自身の「何かわからないモノ」に対して苛立ってしまっているのだ。
    視野の狭い世界にいるからだ。

    だから、後で落ち込んでしまう。
    自己嫌悪というやつだ。

    たぶん彼ら全員がそれを纏っていたのではないだろうか。

    そのモヤモヤに風を送り込むのは、誠人の母の存在。

    誠人の母の台詞や動きは、いちいち染みて泣けてくる。
    「あんな感じのこと、中高生の頃に言われた」と。

    前回に引き続き、異儀田夏葉さんが演じる母親がいい。
    台詞も演技も「母」であり、息子(たち)への愛情を感じる。
    子ども役の役者さんたちと年齢的には同じぐらいなのにね。

    そして、正憲役の佐藤達さんの高校生もいい。
    背中を汚されて誠人の部屋にやって来る表情や誠人とふざけ合っているときの表情はたまらない。前に小学生を演じていて、そのときも泣かされた。ホントにうまい人だ。
    浩子役の墨井鯨子さんの、不器用な女子高生もいいし、誠人役の松本哲也さんの普通の高校生もなかなか。

    就職とか進学にはまったく関係ない、息子・誠人のやりたいこと、を認めた母の愛情をラストに感じ、さらに母のそういう性格を受け継いだような誠人のところには、以前のように、また人が集まってくるのだ。

    彼らは今抱えている問題は何ひとつ解決していないのだが、「居場所」と「友だち」を得たことが、先につながるようで、とても後味は良かった。
    剛士もきっと誠人の部屋にやって来るのではないかな。マルボロ持って。
  • 満足度★★★★

    高校生のモヤモヤな日常
    あれこれ何かとモヤモヤしている高校生たちを描いて懐かしいと言おうか「あったあった」と言おうか。
    また、主人公がある象徴的なことをして幕を引くのも巧い。
    2人を除いて皆高校生役というキャスティングも観ているうちに次第に違和感がなくなるのがまたフシギ(笑)。

  • 満足度★★★★

    はじめての 下北沢
    まず  予想以上にお客さんが入っていて 驚いた!   最終日だし 日曜日ということもあるだろうが、ほぼ満席!

    宮崎県の 普通の高校生の日常を描いたおはなし。  方言が 良い感じ☆

    全体的には のんびりとしていて 、 懐かしい感じで 良かった! 

    ネタバレBOX

    少し残念だったのは、 後半 ややダラけた感じになっていたこと。。
    前半の 明るく元気な雰囲気に比べて、  重苦しい雰囲気。。

    最後に パーと 明るくしてほしかった。。


    やりたくないことをやる必要はない!  自分のやりたいことを やればいいんだ!

    そんな  ストレートな メッセージを もらった気がします!

  • みてきた
    まさに青春ですね

  • 満足度★★★★

    青春
    なんてことのない主人公なのに青春がよく描かれている。いい母ちゃんだ。

  • 登場人物
    登場人物について個人的印象をネタばれ
    欄に書きます。

    ネタバレBOX

    斉藤正憲(佐藤達)→誠人の友達でプロレス技をかけられる。密かに学校でいじめられているらしい。
    中村誠人(松本哲也)→プロレス好きの主人公。通販でベンチプレス購入。
    金丸剛士(加藤岳史)→ちょい悪。兄が東京でオペラ歌手を目指している。DVで親にけがさせる。マルボロを吸っている。
    黒瀬清人(緑川陽介)→金丸の舎弟的存在。モジモジしている。
    押川浩子(墨井鯨子)→引っ込み思案。金丸が好きで誕生日プレゼントを買うが渡せず。
    宮本早苗(柴田薫)→中村達より一学年下だが、本当は同い年。曰く付き。セブンスターを吸っている。金丸と付き合っている。
    安田信之助(犬塚征男)→中村の家庭教師。芸人を目指していた。自分に突っ込む。童貞。髪型がユニーク。
    中村真理子(母、異儀田夏葉)→母子家庭だが、明るく振る舞う。誠人に大学受験して欲しい。
  • 満足度★★★★★

    面白いです。
    お薦めします。
    ストーリー的には、ありそうな話ですが細かな
    台詞のやりとり、役者さん達の演技、音、
    照明、よく作られたお芝居でした。
    所々で観客の想像をかきたてます。

    ネタバレBOX

    宮崎弁は初めてでしたが、違和感はあり
    ませんでした。緊張が走ったり、げらげら
    笑うお芝居ではありませんが、テンポも
    いいし、わたしはこういうの好きです。
  • 満足度★★★★

    そろそろ
    高校生らしい将来への漠然とした不安感などが漂っていました。

    ネタバレBOX

    宮崎県の高校生の話。

    高校生の溜まり場になる部屋ってそういうことかと思いました。学校に近い生徒の家に目を付け、一回遊びに行き、言いたいことをはっきり言わないとズケズケ入り込み、そしてダチや子分を毎日のように連れて行って既成事実にしてしまうやり方。ケッ、そんなヤツが身近にいなくて本当に良かったと思いました。

    それにしても、中島淳彦さんの名作『エキスポ』然り、前作『明るい家族、楽しいプロレス!』然り、宮崎にはしっかり者のお母さんがいて幸せですね。

    お母さんがいて、家にはちょっとした問題があって、主人公はそれぞれの年代らしい夢や不安を持っていてというパターン、少し慣れてきました。

    それとも、プロレスに飽きてきたのかも。
  • 満足度★★★★★

    さらば、ベンチプレス!
    面倒な人間関係や進路問題に巻き込まれて思い悩む、とある高三男子の肖像。
    あの頃を思い出してグッときた。

    ネタバレBOX

     母子家庭に暮らす主役の男子高校生・誠人が看護師の母親に買ってもらったベンチプレスは、プロレスラーを夢みながらレスリング部員として高校時代を過ごし、部活を引退後は体力作りと幼なじみを相手にしてのプロレスごっこに明け暮れてきたちょっと幼稚な主人公の悩みなき幸福な少年時代の象徴。
     そのちょっと幼稚な主人公も高校三年生となったいま否応なく進路問題に直面し、進学を望む母親、その母親が勝手につけたお調子者の家庭教師に進学へのプレッシャーをかけられ、さらには、別段親しくもないのに誠人の部屋を溜まり場にして勝手に家へ上がり込むまでになった図々しい級友達とその女友達に振り回され、それまでには知らずに済んだ人生の苦みを初めて味わう。
     ベンチプレスがやがて使われなくなり母親の物干し台と化するのはなにも誠人の怠惰のせいだけではない。“強い男になりたい!”と無心にベンチプレスへ向かう無邪気さを激変する環境が誠人から奪ってしまったのだ。
     …という、ちょっと苦い青春譚を抑揚が独特で味わい深い宮崎弁による会話を生かしてユーモラスに描いた好編。
     他劇団出演時とは違い墨井鯨子さんが過度なギャグキャラをつけられていないのが新鮮。
     それから、女手一つで誠人を育てる肝っ玉母さんを演じた異儀田夏葉さんの演技の素晴らしさ! あひるなんちゃらでしか観たことがなかったけれど、他にもたくさん演技の引き出しを持っている凄い女優であることが本作を観て証明された! 彼女の新たな所属先となったKAKUTAの年末の新作もぜひ観に行かねば!!

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