満足度★★★★
愛のある、アナーキーなダンス論
日本人男性の笠井叡さんと、フランス人女性のエマニュエル・ユインさんという対照的なダンサー2人のデュオで、どこまで構成されていてるのか分からない、やりたい放題に見えるパフォーマンスの中に、ユーモアと愛のあるダンス論が表現されていて、心を動かされました。
ステージ奥に5脚の椅子が置かれていて、その手前で全身黒尽くめの衣装を着た2人がお互いの動きを模倣することから始まり、日本語、フランス語、ドイツ語、英語でダンスや愛についてユーモラスに語りながら踊り、ニジンスキーの『牧神の午後』や歌舞伎の『三番叟』(と言いつつ実は『助六』)の引用があり、最後は揃いのワンピースに着替えてユニゾンで踊る構成でした。
進行に従って服を脱いで行き、笠井さんはパンツすらギリギリ迄でずりおろしていましたが、変な嫌らしさは感じられず、肉体の存在感を見せていました。
客席にいる笠井さんの知人をいじったり、舞台に引っ張り出して踊らせたりと即興的な要素で笑いを誘っていましたが、それがその場限りの受け狙いで終わらずに、作品全体を通して訴えかけるものとリンクしているように感じられました。
クラシック音楽とノイズをエディットした音楽が素晴らしく、歪んだような音響処理が施された『牧神の午後への前奏曲』が不思議な雰囲気を生み出していて印象的でした。
ダンス系の公演には珍しい程の熱狂的なカーテンコールが続き、拍手の中をさらに踊り続ける姿が美しかったです。