マリオン 公演情報 マリオン」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.6
1-20件 / 23件中
  • 満足度★★★★★

    美しい重なりの先にある生々しさ
    じつにしなやかに
    世界が重なっていきます。
    それぞれの世界にすっと取り込まれ、
    入り込み、再び戻り、
    気が付けば
    異なる世界にひとつの俯瞰が生まれて浸潤されて・・・。

    絶妙にボリューム感があって、
    身体の使い方や歌にも深く捉えられて、
    くっきりとしていて、
    その物語たちを
    一緒に旅してきたような充実感に満たされて。

    でもねぇ、舞台から受け取ったものがあまりにも端正に思えて、
    受け取ったものの一番大切な何かを見落としている感覚もあったのです。
    それが何かに思い当たったのは、
    イベントに参加させていただいて、劇場を出た後のこと。

    舞台の印象が変わったわけではなく、、
    そこに作り手が紡ぎ込んだものに
    ふっと想いが巡って・・・。、
    一つの暗喩を見つけた気がすると、そこから様々な表現の
    新たな意図に思い当たり、
    物語にさらなる景色がすっと浮かぶ。

    考えすぎなのかぁとおもいつつ、
    でも作品に込められたものの、更なる深さに
    想いを馳せたことでした。

    ネタバレBOX

    冒頭、闇の中に男女の会話が生まれます。
    男と女とリアカー。
    敗戦後、街に現われたというマッチ売りの少女
    (客にマッチを売ってその明かりで秘所を晒す商売)と
    客のような二人の姿・・・。

    やがて、女は話をしたいと言い、男は聴くという。
    そして彼女の記憶、旅芸人の世界が現われて・・・。
    『天然の美(うつくしき天然)』のメロディーとともに
    彼女の記憶が紐解かれていく。
    リアカーと太鼓とアコーディオン・・・、
    どこかチープで、でもしっかりと作りこまれた音楽に、
    刹那の明るさと世界の滅びの気配にただよう哀愁が織り上がり、
    そのなかで語られるセイシェルぞうがめの物語が
    観客をも、その顛末に閉じ込めていく。

    ぞうがめの物語を織り上げる、その表現の細やかさや
    身体での空間の造形の確かさに目を瞠る。
    そこには、きっと男性が概念でしか理解し得ない
    女性が抱く命を育み、繋ぐ想い、
    過ぎ行く日々と恋する心、
    さらには男性の冒険心と、
    記憶の中に生きる時間があって。

    物語を語る一座は、
    父の望郷の思いとともに旅を続け、
    少女はひとりの女になり、
    さらには、一座はこの国の廃墟の中に滅び記憶となる。
    そうして、彼女は残されて、物語は冒頭に返り、
    光景は自らを抱え込んだ女性と、その女性をショウワの遊びでのぞく
    男のすがたへと立ち戻って・・・。

    そして、表層の部分の、
    互いの距離感の中で、男は女の名前を尋ねるのです。

    観終わって、しばらくは、三層(とちょっと)の物語にただ浸されていて。
    やがて、つながり行きかう物語の刻まれたシーンたちが蘇る。

    まずは、互いが再び戻る孤独にとまどうように、
    女に名前の聞いた男の気持ちが広がり、
    聞かれた女の今が改めて解け、
    彼女自身の歩んだ道と、
    寓話に織り込まれたゾウガメの一生に重ねられた女性の長い孤独と、
    そこに交わろうとする男性の人生のありようの俯瞰が生まれて。

    役者達の演技も実に秀逸で、生地を染めて物語を描くのではなく、
    一本ずつの糸を紡ぎ、染め、織り上げていく感じがあって。
    身体で紡がれる動きも、リズムも、台詞のニュアンスも、感触として訪れる。
    それは、やがて、その座標に生きることと女性が普遍的に持つタイムテーブルと
    セイシェルゾウガメの物語に描かれた孤独と、それを伝えたいとおもう気持ちとなり、
    暗喩がひとつずつ翻り、重なり、
    ひとつの作品のボリューム感となって鮮やかに伝わってくるのです。

    観終わって、とても美しい舞台だと思い、
    やがてとても生々しい舞台だと思った。
    その異なる乖離した感覚が、
    不思議なことにひとつに束ねられて、
    終演後そのからさらに踏み込んだ世界に
    幾重にも解けていったことでした。
  • 満足度★★★★★

    すごく良かった
    せつなくも壮大な世界に引きずりこまれる物語で、観劇後思い返しても気持ちがうまく言葉に出来ないです。愚直に言えば、すごく良かった。壮大に広がる世界を、丁寧に、ユーモラスに、優しく、易しく、でも深く表現されていて、これをきちんと言葉にしたいけどうまくいかないです。でも、アフタートーク含めて、堪能しました。

    ネタバレBOX

    アフタートークで、「日本人が絶滅する可能性」とか、「卵を盗むことや、腹違いの子供たちをまとめて愛することへの、血のつながりを超えた人間の懐の深さ」について言及されていて、すごく刺激になりました。
  • 満足度★★★★

    いつもと少し違うけど、やっぱり青☆組
    セーシェルゾウガメの物語を演じる旅役者の一座、を思い出している、その中の一人の女と、その女と一夜を共にした男が、翌朝語る会話、というスタイルで、三重構造で物語は展開される。ゾウガメの話は現代(より少し前?)だが、他の2つは、世界が果ててしまった「いつか」の未来、ということで、やや幻想系の感触もある。三重構造や物語の題材など、いつもの青☆組とは少し違ったテイストで芝居は展開されるけれど、ベースにある人間への信頼と失われていくものへの哀しさは吉田小夏らしい感触をしっかり残している。
    軸になる大西玲子の成長が著しい。

  • 満足度★★★★★

    千秋楽
    ちょっと悲しい側の、スケールの大きな物語、とってもいいです。

    ネタバレBOX

    かつて四季のあった星で過ごし、今は一年に秋が三回ある星の誰も住まないニッポンにいる女性、どっちが地球なのか頭がクラクラしますが、遠い遠い未来の昔話のお話です。

    最初の男と女の会話からは原発事故のことがとんでもない誤解だったかと思いましたが、終盤の会話からはやはりそれでも良いのだと思い直しました。

    これだけは言っちゃいけないような気もしますが、アテ書きの妙、大西さんは本当にゾウガメにピッタリでした。福寿さんも藤川さんも。そう考えると、林さんの柴犬のワン公も見たかったなと、松本さんには申し訳ないですが今さらながら思ってしまいます。
  • 満足度★★★★

    悲しい運命の中の小さな灯
    実在のソウガメの物語を語る世界。
    その世界も夢物語とも思いたい寂しい未来の日本。
    だから全体的に寂しく淡々と目で追っていくのですが
    幸せなのか、悲しかったのか、話相手もいない彼女から
    語られる事はないのですが、彼女の物語が
    未来に小さな火を灯す事が出来たのかな?
    そんな風に思い、ちょっとだけ温かいお話しでした。

  • 満足度★★★★★

    生きざまを問われた!
    全てのレベルの高さに感銘を受けた。脚本・演出・役者の凄さに痺れた。再演を熱望する。

    ネタバレBOX

    青☆組の他の作品でも音楽に意味がこめられているが、今回の「うるわしき天然」は昔の懐かしい思い出と結び付いており、ひとしお感慨深かった。
  • 満足度★★★★★

    最っ高に叙情的!
    まるで美しーい絵本を1枚1枚捲っているような、
    誰にも邪魔されたくない時間を過ごせました。

    ネタバレBOX

    涙腺緩い方は2,3回は涙流せそうです。
    お楽しみに!

    後家さんのタペストリー?がわーっと延びているシーン
    最後に星のように灯ったビリケン球

    この辺りも単純に観ていて惹かれました。
  • 満足度★★★★

    時を越えて問う。
    未来のようでどこか懐かしい雰囲気。「時」の流れや、マッチの灯りを優しく包んだような照明など、全体の質感がよいと思いました。役者さんの演じ別けも見事です。

    ネタバレBOX

    これから何が始まるんだろうという、ドキッとする始まり方と、名を訊く終わり方が綺麗ですね。昭和歌謡のような音楽もよかったと思います。

    帰ってから調べましたが「マリオン」という名の亀は実在したそうで、砲台から落ちて死亡したという史実に言い知れぬ感情が芽生えました。
  • 満足度★★★★

    今までなかった青☆組
    舞台美術もすてきだったし、5人のアンサンブルもすばらしかった、90分でした。

  • 満足度★★★★

    今までとはちょっと違った雰囲気
    いくつかの時間軸に、いくつかの物語が展開されていく構成、役の演じ分け、見事でした! シーンの転換も巧く分けられてはいたのですが、少し解りにくかったところがあったのと、舞台設定の全体像のイメージがぼんやりとしか想像できなかったのに観る側の力不足を感じました。

  • 満足度★★★★★

    美しい時間でした。
    電車の遅延で開演に間に合わなかったのですが2階席で芝居を上から観るという面白さがありました。
    芝居はとても緻密で繊細でいて生きることの哀楽を感じました。共に生きていくと信じていた人たちとの突然の別れを誰もが持ち得ているんだと思いました。観終わったあと、私にもあった大事な人たちとの別れと孤独とともに、その人たちとの大切な想い出が湧きあがってきて、悲しさと歓びが入り混じった気持ちが今も押し寄せてきます。
    すばらしい役者さんたち、美しい照明、海に連れて行ってくれたような美術。何度でも観たいお芝居でした。

  • 満足度★★★★

    素敵な空間
    廃墟を感じさせる不思議な舞台、ゆったりした客席・・・素敵な時間を過ごせました。
    青☆組さんのお芝居は、言葉が綺麗で安心する。暗闇の中で交わされる会話にも思わず聴き入る。
    明るい未来のお話ではないけれど、観終わってほっこりした気分になった。

    ネタバレBOX

    今より昔と、あるとしたら今よりずいぶん先と、それより少し前・・・の3つの時代を行き来しながら語られるお話。
    ゾウガメの動きがなんとも可愛らしい。
    福寿さんの演じるばあば。全てを知っていて受け入れるような表情が切なくて、ちょっと泣きそうになった。
    孤独と向き合えるのは、愛されて愛した記憶があるからかしら・・・なんて想像したり。
  • 満足度★★★★★

    感性
    初めての青☆組観劇でしたが、瑞々しくて細やかで暖かい感性がとても心地良かったです。
    少女から老婆まで、女性が持つ可愛らしさが溢れてました。

    常につきまとう孤独感が、より深みを増し、未来なのにノスタルジーを感じたり、春の中に秋の侘しさを感じたりもしました。

    演技力の高さにも目を見張りましたが、特に場面転換での演出がとても良かったです。

  • 満足度★★★★

    すごいね。
    この空間は是非体験していただきたいなぁ。
    ファンタジーですが、暖かさや切なさが心地いい。
    特に役者さんの表情や声の変化に注目していただきたい。暗い会場ですが、よーく見て欲しいです。
    作・演出の小夏さんに拍手!!

  • 満足度★★★★★

    とても静かで美しく、力強い
    物語でした。この静かなお話を全くゆるみなく演じきった役者さんたちもすごいですが、何よりも脚本の力に脱帽です。日常に溺れ、時間に忙殺される私たちの人生観を思わず見直すほどの力強さを感じてしまう。生命とは、時間とは、そこに流れる歴史を貫く意思とは何だろう。何だか久しぶりに哲学を感じるお芝居でした。

  • 満足度★★★★★

    すばらしいの一言!!
    今までの青☆組とは一味違う試みもあり、新たな一面も楽しめました!
    吉田小夏の脚本は上質で奥深く、受けとる側の想像を大いにかき立てます。
    そして、時空を素敵に行き来する演出の巧みさには、つい唸ってしまう。本当に上手い!役者さん達は、すばらしい力量を発揮して、最後まで観る者のこころを離さなかった!!

    ネタバレBOX

    大西玲子は、なんと色々な素質を持っているのだろう!1人芝居できそう!
    荒井志郎は、なんと良い声を持っているのだろう!あの演技と声は魅力この上ない!福寿奈央の美しさと演技力には、これまた参ってしまう!藤川修二のあの渋さと個性は、代わる者がいない!松本ゆいは、急な代役としてさぞかし大変であったろうが、見事に演じ切った!
    皆さん、すばらしかったです!!
  • 満足度★★★★★

    90分で幾世紀もの旅の余韻!
    ありがとう!なんとも言えない旅でした。なによりも、役者さんが何役も見事に演じ分けるのに驚き、尊敬してしまった。光と自然の流れに場面の切り替えが同期して心地よかった。役者さんたちの目線に吸い込まれ、一緒に景色を思い描くことができ、一体感を味わった90分の間に幾世紀かを行き来してしまった。こんなにも感性を揺さぶられる体験は生の劇場空間だからこそ味わえるもの!役者さんたちの熱演ぶりに参りました。もういちど、ありがとう!!

  • 満足度★★★★★

    小夏さんの魅力満載
    切なさが突き刺してくる痛みを、柔らかく包み込んでくれるような、愛と優しさに満ちた時を、過ごせました。

    大人の女の感性と、少女の透明感が輝いて、とても魅力的でした。

    命が求めて止まないもの、支える想いと、生み出す力に、思いを馳せました。 

    ネタバレBOX

    青組公演は、『忘却曲線』から5作(『青色文庫』以外)観ているが、タイプ的には『キツネの嫁入り』に近いタイプかな?極極極私的、感想ですが、、、
    ほんのりSF的な未来の世界で、『春』を売る女性(娼婦)と男性客の会話
    娼婦の育った過去の時代と環境や、旅芸人だった家族との回想

    ゾウガメの120年余りの物語(メルヘンチックなんだけど、人生と大差ないように、思えました)

    3つのストーリーの紡ぎ方が見事で、複雑そうだが、解りやすかった。
    場面転換の演出も良かったし、特に、マッチやロウソクの炎の温もり明るさ、微かに漂う残り香が印象的で、とても作品の雰囲気に合っていた。
    タンバリン、カスタネット、ちょっとガラクタ?チックな缶製?な太鼓、、、、等で奏でる曲、暗闇の中での会話、暗めの照明等々、とても良かった。

    ゾウガメの会話や心得には、笑いながらも、感慨深かった。ばぁーば(福寿奈央さん)マリオンおじょー(大西玲子さん)が、特に素晴らしかったです。ゾウガメの歩みも、とても良かったです。

    真っ直ぐな純真さ、憧れ、ときめき、憂鬱、陰影と、様々に揺れ動く心情を、見事に演じわける役者陣が、とても素晴らしかったです。

  • 満足度★★★★★

    惹きこまれました
    お芝居にいろんな要素をつけ加えた積層型の演劇よりも、シンプルで必要最小限の演劇が好きです。「放てば手にみてり」の心持ちですが、実際には選択肢を自ら無くすことで、表現を狭めてしまうことにもつながり、難しいように思えます。このお芝居では、姿すら消して、様々な想像をかきたてます。素晴らしいお芝居でした。

  • 満足度★★★★★

    メルヘン
    個と種のことを考えました。

    ネタバレBOX

    最後のゾウガメの話と、最後の日本人の話と、その最後の日本人の一家が旅芝居をしていた頃の話。

    甲羅の張り具合で成熟度が知れる、生き物それぞれで異なる嬉し恥ずかし乙女心の描き方は繊細で素敵です。

    ペットに名前を付けるということは最後まで責任を負うこと、飼い馴らすを考えることと同じですね。

    孤独を厭わないゾウガメです。いずれ訪れる単なる個としての死だったはずが、カモメ郵便の知らせが届いたせいで種の絶滅という大事の当事者になってしまいました。知りたくもない情報も耳に入る情報化社会でした。

    下手側の奥にロケットのようなものがあり、後で灯台だと判明しましたが、四方八方にコードが伸びていてやはりロケットに見えました。

    別の星から地球に戻ったのでしょうか、最後の日本人は日本で売春を生業として生きていますが、一夜を共にした男は北へ、彼女はアサクサへと別れていきました。原発の事故処理で一時的に来る労働者はいても、国籍とか住民票的な意味での日本人はもう他に誰もいないのでしょう。

    私も一気に絶滅危惧種の一人になってしまいました。

    隕石の落下後飢えてドタバタしながら息絶える恐竜のCGをよく見掛けますが、実際は食料が減ったとしても少しくらいはあって、最後の恐竜は自分が最後の一頭だと意識することなく個としての生を全うしたのだと思います。

    日本人も銘々が個の人生を送っている間に誰もいなくなってしまうのでしょうか。自分も当事者だと気付かせてくれる持って行き方は秀逸でした。

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