突き詰めないソフィー
A「要するに『ソフィーの世界』だ。
童話で描かれる世界に住む人々と、この現実に生きる人々。
テーマは、“私は誰なのか”ということに尽きる」
B「ファンタジーながら、モクモクと煙を焚き、イリュージョリニックな雰囲気を出す照明ではなかった。むしろ、カーテンに映し出す夕陽は 舞台の会話劇を堅実なものとしている」
A「シチュエーションとしては、ずうっと室内。ところが舞台のセット自体はカーテンの部分だけ削られた白壁と、椅子のみだ。そうした、シンプルなセットだからこそ、晴天や夕陽の輝き、夜の寒さを照明によって映し出すことが可能となるのかもしれない」
B「現実の世界における時代は いつなのか、疑問だ。
中央病院やパイ研(円周率研究会)などの名称から考えると、21世紀だと言える。
いや、衣装並びに家の設定から考えると、童話の世界と同じ 産業革命以前の世界とも言える」
A「時代性が正確に分からないのは、服装がポイントだ。登場人物は いずれの世界に存在する際も、同じ く アンデルセン風の衣装だった。
狙いがあれば別だが、兄妹の衣装については工夫ができたのではないか。
むしろ、“書き足し”により童話の世界と一体となっているのが鍵なのかもしれないが」
B「牌研の女性(現実)と、先生に噛み付いた女の子(童話)は、同一人物なのかも気になる。もう少し掘り下げてくれれば、より概要を理解できただろう。ラストの絡まる展開も、さらに誇張できなかったか」
A「『ソフィーの世界』は、紛れもない名作。人が持つ根本的な疑問を問うてる。
本作がソフィーへのオマージュかは知らないが、名作感が溢れ出ていた。これだけでも、誇るべき舞台である」