満足度★★
言葉と状況
カミイケタクヤさんによる、廃材を集めて作った災害の後の廃墟のような美術の中で、黒いツナギを着た山下残さんが言葉と動きを物語性もなく続ける、実験的な作品でした。
空間を対角線に通る線路 や木彫の熊の置物、チェーン、タヌキの剥製等を指したり、手に取ったりして、その名を言うシークエンスが続き、「大火災、大洪水、大震災、逃げてください」と切迫した調子で巻くし立て、本当に移動しないと駄目なのか一瞬戸惑いを感じました。
終盤に朝、雨、夕方、雪の4つの単語を高速で言いながら踊った後、前半で名前を呼んだ物達をもう一度読み上げてあっさりと終わりました。
ところどころに瓢々としたユーモアを感じさせながらも基本的に不穏な雰囲気が支配的で、分かり易いエンターテインメント性もメッセージ性もなくて退屈しそうなのに、観ていると引き込まれる不思議な魅力がありました。
発せられる言葉の意味より、言葉が発せられた時の状況を大事にしている感じがスリリングで興味深かったです。
2010年に初演を行った作品ではあるものの、今上演するとどうしても3.11を連想させる内容でしたが、殊更にそれを強調していで淡々としていたのが良かったです。