満足度★★★★★
カルマ
黒一面の舞台は至って簡素で、上手下手にシンメトリカルに竹が据えられ、中央奥には、扇の骨状に孟宗竹を配し、其々の骨に絡むように半円、或いは螺旋に殺がれた竹があしらってある。無論、これは、焔のシミリだ。更に床面には、各々二組ずつ観客席側を除く三方に、孟宗竹を丸太状に切り、枕に竹をあしらったオブジェが並ぶ。実にシンプルな舞台だが、役者陣の演技や存在感を高めて効果的である。音響も一工夫が為されている。通常の人工的に作られた音以外に、原始的な楽器や、動物の鳴き声を真似た狩人の発する音のような声が、観客に不思議な感覚を目覚めさせる。
主人公、高橋 お伝は、明治政府の道徳政策によって”毒婦”のレッテルを貼られ、仮名書 魯文作「高橋阿伝夜刃譚」で一躍、悪女として有名になったが、本当に人口に膾炙した俗説は正しいのか? ファーストシーンでは、この俗説を真っ向から否定するように、快活で利発、判断力の非常にしっかりした意見のハッキリ言える女性としてお伝は登場する。因みに今回の舞台でお伝を演じる女優は三人。一人の女の中にある様々な要素を身体化する方法としてのキャスティングだ。