満足度★★★
白と黒、そして青と赤
ダンサーとミュージシャンそれぞれ1人による、冷たい質感の漂う50分程度のパフォーマンスで、人種や国籍に纏わるアイデンティティーについてのメッセージが感じられる作品でした。
開場すると煌々と明るい照明の中、裸の上半身を真っ黒に塗ったダンサーがゆっくりと回転する台の上で固まって立っていて、ミュージシャンが舞台に現れてメトロノームを鳴らすとそれに合わせて手旗信号のような動きが繰り返され、次第におびえているようにも見えるダイナミックな動きに変容して行きました。
ダンサーが一旦捌けて黒のペイントを落として現れると次は顔を真っ白に塗りたくり、5拍子や9拍子のいびつなリズムに合わせてもがくようにタップを刻む姿が痛々しかったです。
最後のパートは国歌のコラージュ音楽の後にドマラチックなピアノ演奏が続き、顔をフランス国旗の3色で迷彩状に塗ったダンサーのアップの映像が流され、フランシス・ベーコンの絵画のように歪んだ顔が抑圧された人の悲痛を思わせました。
白と黒の工業製品が並ぶ無機質なヴィジュアル表現が魅力的で、舞台中心の上空を回り続ける照明を取り付けた鉄パイプが象徴的で印象に残りました。ピアノ、オルガン、ギター、パーカッションとエフェクターを駆使したインダストリアル~オルタナティヴ系の音楽が格好良かったです。
テーマ抜きにダンスや音楽単体としてもクオリティーが高くて見応えがありましたが、何かを訴え掛けているのは伝わって来るのにそれを理解出来ないもどかしさを感じました。
パンフレットに転載されていたル・モンド紙に出たレビューを読んだところ、タイトルにもなっている万国博覧会にまつわるエピソード等、ヨーロッパにおける黒人の歴史についてある程度知識がないと分かり難い作品のようで、コンテクストを共有していない海外の先鋭的な作品の受容の難しさについて考えさせられました。