満足度★★★
静の歌手と動のダンサー
様々な表現形式で描かれているメデア(メディア)の悲劇をオペラ化した作品で、音楽的には晦渋ながらも物語としてはストレートに描いていて、意外と取っ付き易かったです。
浅く水が張られた上のせり付きの楕円型平面のステージをメインに、可動式のステージや櫓も用いたダイナミックなセットの中、6人の歌手と6人のダンサーによって演じられました。
白い仮面を付けたダンサー達がメデアの心境を表すように踊っていたのは説明的過ぎるように思われて、振付自体にも魅力を感じられず、残念でした。照明が真っ赤になり、セットが沈んでいく子殺しの場面も演出が過剰で、逆に冗談っぽく感じてしまいました。
ピットには弦楽器だけが入り、ステージ上の下手に木管楽器と打楽器、上手に金管楽器と打楽器という特殊な配置となっていました。客席を潰せばピット内に全員収まるのでしょうが、この作品では合唱を用いていないので、奏者達をコロスに見立ててギリシャ劇らしさを演出する意図が感じられて興味深かったです。
ギスギスした暴力的な響きが多用され、美しい旋律も躍動的なリズムもない音楽でしたが、物語に則したドラマ性があり、ワーグナーやリヒャルト・シュトラウスから繋がる伝統性を感じました。何度も現れる2度下降音形が復讐が始まる辺りからは2度上昇音形に反転して現れるのが印象的でした。
メデアを演じた飯田みち代さんは感情に沿って歌声を使い分けていて、出ずっぱりなのに最後までパワーダウンせずに歌いきっていて素晴らしかったです。オーケストラは前半はしっくりこない感じがしましたが、後半は無調音楽ならではの緊張感と色気があって楽しめました。