実演鑑賞
満足度★★
珍しく新国立劇場が満席だった。やっと最後列が二席空いていて見た。最後列に関係者席らしい席が六席空いて、そこに滑り込みで若い女性がきた。結構若い人も少なくなかったが、ほぼ、90歳前後に見える老男女が看護人つきで十数人来ていた。こんなに混んでいるのはここ10年ほど見たことはない。
生前の三好十郎を知っている人もいる年齢だが、この作者、オールド新劇ファンには人気があるが、この作品はあまり人気もなく、見たのは初めてである。いつものことだが、この劇場ではいつものことだが、作品を今上演する意図が分からない。
戦後5年の日本人の精神風景をドキュメントのように作ってみた作品と言うことだろう。今のテレビならNHKの「72時間」である。中年の男が二人、夜更けの甲州街道を最終電車に乗り遅れたのか、中央線沿線の沿って家路につく。行きずりに出会うのはサラリーマン、警官、復員服の男、都会から肥だめで糞尿を運ぶ農夫、娼婦、戦争未亡人。出会いが偶発的二仕組まれてはいるが、計算づくだから、風俗的な興味以上に、深まるはずもなく、時折歩く二人が深刻になったりすると、嘘つけ!という感じになってしまう。まぁそれは、戦後五年という時期を生きてもいない人たちが現場を作っているのだからいくらコツコツやってもそこは仕方がない。見てる方も半数以上生きていないだろう。
丁度この時代を背景にした作品というなら、二三年前に上演された古川健の「帰還不能点」がある。このあたりは作者(三好)の責任ではないが、いまの作家なら、今に時代にこの作品をいかすようにするだろう。それは別にコツコツことやるかどうかと言うことは関係ない。これでは骨董品研究所作品である。
実演鑑賞
満足度★★★★★
プログラムによると、「こつこつプロジェクト」というものから生まれた上演ということらしいが、なるほど研究や掘り下げに耐え得る独特の作品。かなりの低料金で観させてくれるのでありがたいが、生易しい作品ではないので、観る側もしっかり意識を集中していないと意味が把握できなくなる箇所がたくさんある。後半はほとんど二人だけのシビアな会話劇となるが、あんなふうに本来不自然な足踏みをしながら大量のセリフを駆使して演技し続けなければならないのは非常に難易度が高いと思われ、演技者としての主役二人の凄さに舌を巻く。