令和7年初春文楽公演 公演情報 令和7年初春文楽公演」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.0
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  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    「大顔合わの『九段目』」

     初春文楽公演第二部は「忠臣蔵」のサイドストーリーである加古川本蔵親子の物語である。

    ネタバレBOX

     まずは加古川本蔵の妻戸無瀬(人形:和生/浄瑠璃:靖太夫)と小浪(人形:簑紫郎/浄瑠璃:呂勢太夫)母娘が由良助が暮らす山科へと向かう道中を描く八段目「道行旅路の嫁入り」から。清治ら三味線の合奏に酔いしれると浅葱幕が落とされて、行路の戸無瀬と小浪の姿がパッと舞台に映える。道中で小浪が見せる恥じらいを、簑紫郎と呂勢太夫がうまく見せた。

     さて、数ある浄瑠璃のなかでも特に難曲として知られる「九段目」に今日では最高の顔ぶれが揃った。まずは歌舞伎ではほとんど上演されることのない「雪転がしの段」で、祇園一力茶屋から太鼓持や仲居らを連れきこしめした体で帰宅した由良助(玉男)が、雪だるまを作って遊ぶ。奥から出てきた妻のお石(一輔)が入れた茶を飲み一子力弥(玉勢)が茶屋の人間たちを返す。そこから由良助が腹の底に隠していた忠義の意思を語る、この変化を玉男と睦太夫の語りがうまく見せる。七段目「祇園一力茶屋の段」の華やかさの余韻とここからの緊張をうまく見せる場面である。

     やがてやってきた戸無瀬と小浪がお石に力弥への縁談を請うものの受け入れられず、思い余った戸無瀬が小浪を大石家の庭で殺そうとする異様な場面となる。ここでは「鳥類でさえ子を思う」の浄瑠璃に和生の戸無瀬がうまくはまって一番の見応えである。お石が祝言を挙げる代わりに加古川本蔵の首を差し出せと戸無瀬に迫る場になって、虚無僧に身をやつした本蔵(勘十郎)が姿を表す。由良助が遊興にふける姿をなじる本蔵をお石が槍で突き刺そうするところ悶着となり、奥から出てきた力弥にわざと腹を突き刺させ、己の本心を告げるまでの巌のような大きさを勘十郎が見せる。今際の際となり奥から出てきた玉男の由良助との邂逅も、今日の人形遣いの重鎮二人の大顔合わせで大いに堪能した。

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