鏡男・実盛 公演情報 鏡男・実盛」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.0
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  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    「問答が明らかにする武将の未練」 

     加賀の国篠原にやってきた遊行の上人(宝生欣哉)は、里人(茂山逸平)ら地元の人々から、説法の前後に独り言を言っていて不審がられている。上人にだけ見える老人(友枝昭世・前シテ)はかつてこの地で木曽義仲軍に討たれて命を落とした斎藤実盛の逸話を披露し、自分こそその実盛であると告げて姿を消す。夜になり念仏を唱える上人の前に姿を表した実盛の亡霊(友枝昭世・後シテ)は、白髪を黒く染め錦の直垂をまとった出で立ちでその壮絶な最期の様子を再現して闇へと消えていった。

    ネタバレBOX

     友枝昭世の老人は、橋掛かりから「紫雲の立って候ふぞや」と本舞台の方を見て合掌する姿が哀切を極める。伴奏のない無音の空間で繰り広げられる上人とのやり取りは緊迫感があり、この二人が対話を重ねるごとに老人が自身の正体を明かすプロセスが明快である。ようやく始まった地謡の「幻となって失せにけり」で揚げ幕のほうへゆきかけるも、一度正面を切ってからゆくというプロセスが、実盛の此岸への未練をあらわしていた。

     後ジテの実盛の幽霊は前ジテから一転した勇壮さで驚くとともに、地謡とともに仏への信仰についての問答に迫力がある。馬上で手塚の太郎に討たれるくだりの勇壮さと嘆きが強く伝わって哀切極まるところであった。

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