実演鑑賞
満足度★★★★
「劇」小劇場の特徴(空間的な収まりに影響)が意識される観劇であったが、思い起こしてみれば数年前の名取事務所の果敢な作品もステージの扁平さにもどかしさを覚えたものだった。美的な好みで言えば表と闇との境界が明瞭でなくグラデーションであるのが良く、奥行の無い舞台ではそれが難しい・・まあそれだけの話ではあるが。
久々に大人数(適度な人数とも)で賑々しいハンバーグ芝居の舞台はお爺お婆の集う場所。独居の淋しい老後でない「最後の友達」と過ごす場所には一つ特殊な事情が秘められている。のだが、この特殊な事情は、描かれる日常風景の中に溶け込んでおり、ある意味で「理想の体現」が為されている、と見えている(それが平均的な見え方かどうかは分からないが)。その心は、中盤に一人の老人が若いスタッフに吐露する持論の中に凝縮され、静かに胸を打つ。そしてこれは現日本への静かなプロテストでもある。
キャラクターを生かした役人物たち(ご老人達)の競演が楽しい。
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2024/03/02 (土) 14:00
座席1階
迫りくる老いを真正面からとらえ、生まれてくる命と対比する。テーマは生と死で、それはとりもなおさずどう生きるか、どう死ぬかという問題である。ある意味タブーとされている問題に切り込んだ。演劇だからこそできる物語だが、重たい問題だけに突っ込み不足だったという感じもする。
舞台は、最近あちこちでできているグループリビング。気の合う者同士が一緒に暮らし、食事などのサポートがある。若者たちのシェアハウスとは異なり、高齢者のグループリビングが代表的。ただ、介護が必要な人たちのグループホームとは区別される。
男性は群れるのを好まない傾向もあり、グループリビングは女性が多いというイメージだが、今作での男女比は半々だ。人生の最後を仲間同士で過ごそうという趣旨だが、老医師が開設したこの施設には秘密があった。そのヒントが、冒頭に登場する。
人間ドラマでは定評のあるTOKYOハンバーグ。キーポイントとなる登場人物が、開設した医師の孫の男性だ。いじめを受けて精神的に追い詰められ、死にたいと思っている。ここに世代を超えた「生と死」が登場する。舞台では高齢者の「生と死」と対比して描かれるが、分からないでもないのだけど若干無理な理屈だなと感じる部分があった。
詳しくはネタバレなので書けないのだが、この人たち(入居者や医師の孫など)に社会福祉というのは無力なのだと描かれていてちょっと絶望的な気持ちになる。確かに、年金を含めた社会保障は危ういところがあるのだけど、社会福祉こそがこの人たちを支えるツールであると自分は信じたい。そんなことを言っていては演劇にならないのかもしれないけれど、自分はそればかり考えていた。
重いテーマに取り組もうとした意欲は買いたい。でも、何と言われようとも入居者たちの判断は正しいと思えないし、だからこそこの人たちを支える社会を作りたいと思うのだ。