音楽劇 わが町 公演情報 音楽劇 わが町」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 3.0
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  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    第一幕60分休憩10分第二幕55分休憩5分第三幕40分。
    凄く好きな作品。以前翻案した作品を観たことがあったが本物は格別だ。俳優座劇場オールスターズの貫禄。本当にこの劇場が失くなってしまうのか?と詰め掛けた観客皆が思ったことだろう。
    主演の土居裕子さんの輝き。進行の清水明彦氏の妙味。坪井木の実さん、片桐雅子さん、満田恵子さんの聖歌隊の灯し火。加賀谷崇文氏の発する痛み。高橋ひろし氏、斉藤淳氏の語る重み。奥田一平氏の純情。

    作曲家上田亨氏の名曲が炸裂。「ストロベリー・アイスクリーム・ソーダ」は残る。
    作品を味わうのではなく考える。考えて考えて考えて、そしてまだ判らない。それは自分のことだから。ソーントン・ワイルダーが何処まで考えていたのか。演劇の枠組を超越した思想の片鱗を感じさせたかったのか。

    さようなら俳優座劇場・最終公演はシェイクスピアの『嵐 THE TEMPEST』で4月。観ざるを得ない。

    ネタバレBOX

    主演のエミリー役・土居裕子さんが少女から出突っ張り。「アラフィフでよくやるな」と思っていたら66歳。マジか!?高橋真麻みたいな明るさで歌い踊る。自分の婆ちゃんがその歳頃だった頃を思ってショック。ちょっと信じられない若々しさ。
    彼女に恋するジョージ役は奥田一平氏。思い詰めた純情が沁みる。
    この世を否定して自殺した加賀谷崇文氏の痛み。
    満田恵子さんの複雑な表情。

    これは『クリスマス・キャロル』の裏面だと思った。『クリスマス・キャロル』はガチガチの現実主義者が“死”という逃れられない不条理に直面して自らの“生”を変えていく物語。“死”を変えられないならば“生”の受け止め方、自分の意識を変えるしかない、と。
    逆に今作の登場人物達は第三幕、死者となり、自分の墓石の前でぼんやりと佇んでいる。何だかもう全てがどうでもよくなっている。感情がなくなった。墓参りに来る者達を見ても何も思わない。だが死んだばかりのエミリーはそうではない。もう一度生きていた日々に戻りたいと願う。“生”の歓びを感じたいと。皆の制止を振り切って子供の頃の自分の家に戻る。そこで感じるのは圧倒的虚無感。虚しい。死者の目から世界を眺めると全てが無意味。凄く好きだった映画が全く頭に入って来ず、耐え切れなくなって映画館を途中退席するような気分。虚しい。全ては終わってしまった。
    墓地に帰ると真夜中に独り戻って来たジョージが自分の墓石の前で泣き崩れている。ああそれすらも。

    ①1901年5月7日 エミリー14歳。隣家のジョージが勉強の手伝いを頼む。
    ②1904年 エミリー17歳。ジョージとの結婚式の日。
     1903年 エミリー16歳。ストロベリー・アイスクリーム・ソーダを食べながら突然ジョージが求婚する。
    ③1913年 エミリー26歳。お産の時に亡くなり墓地に埋められる。
     1899年 エミリー12歳。誕生日の日を味わいに行く。

    ストーリーはジョージとエミリーの恋心から求婚、結婚式から出産時に亡くなったエミリーの葬式へとすっ飛ばす。本来の物語の語り口ではない。観客が期待する起承転結をわざと外す。真夜中に独り泣き続けるジョージ、それを何の感情もなく見つめているエミリー。空には満天の星空。毎日単調に生活することのかけがえの無さを訴えたかったのか?だがそんな気分には到底ならない。
    なんて虚しいんだ。

    Jawbreaker 「Kiss the Bottle」

    そう君に時々寄り掛かる
    君がまだそこにいるって確かめる為に
    君の脚は自分自身さえ支え切れやしない
    ましてや二人なんかは・・・
    コンクリートに叩き付けられてしまうのさ

    何でこんな酷い世界に生きているんだろうか?
    俺が君の為に素敵な絵を描こうとしたことは知っている筈
    でも俺達は線路で力尽き、荷台から夜行列車へと放り棄てられてしまった

    俺は酒瓶にKissをする
    本当は君にするべきだったのかもな
    君が目を覚ますのは空っぽの夜で
    二人分の涙を抱えたままだ

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