満足度★★
旗揚げは寿ぎたいが
待ちに待った北区AKT STAGEの公式旗揚げ公演。
客を呼べる演目には事欠かないのに、一番の問題作とも言われる『広島』を選んだ意欲は買い。
面白く観た。特に南海の孤島でのディープ山崎と部下達の納豆作り生活の楽しさ、リズム感はこの劇団ならではかな。
けれど観終わって、つか作品を愛する身には、サイズダウン感が否めない。
昨年渋谷で見た筧利夫主演の同作の方が、笑いこそ少なめだったがはるかにテーマが大きく、主演の迫力も上だった。
筧版は原作小説と同じ韓国人の「犬子恨一郎」だったのに、今回は以前稲垣五郎とかで上演されていた日系ロシア人「ディープ山崎」のまま。
ディープ山崎は、秀才ではあるけれど、優越感と劣等感に引き裂かれた、部下をこき使ったり甘えたりする温室育ちのせこいオトコ。杉山圭一のちょこまか感ともあいまって、面白いけれど物足りなかった。
正常な神経のまま原爆投下のボタンを押せる「たった一人の人間」とは到底思えない。ヒロインの夏枝も、特別な存在に思えない。
このカップルは、世界に選ばれたたった一組のペア、「核融合にも匹敵する愛」の物語だったと思うのだが・・・。
犬子恨一郎版なら浮き出てくる、差別に関する大きなテーマもどっかに薄れてしまった。もっと突き詰められた「広島」を観たかった。
同時上演の『我が上なる星空』は、劇団初のオリジナルだというので、まずは観ようと思ったのだが・・・。
平安時代っぽい設定で鬼と戦い、「どんな願いもかなう刀を見つける」って、まるで劇団新感線のミニ版みたいに見えた。
「お前の見方ひとつで世界はいくらでも変わる」「この世にいらない人なんていないんだよ」「信じれば、必ず見つかる」・・・・・
なんでしょうこのメジャーでJポップ的な世界観は。単なる市民劇団ならともかく、あの「アフターつか」のAKTとしては残念。
つかファンとして、この劇団についていけるかどうか、不安を感じました。
満足度★★★★
ディープ山崎ですか
小説版をベースとした話とばかりおもっていたのだが、良い意味で裏切られてしまった。犬子ではなく、ディープ山崎とは。こちらの方が、つかさんの原作に近いのだろう。先日早稲田大学で戦争で死ねなかったお父さんのためにのビデオを観てきたところだが、土人の娘のシーンや四国を菱形の馬鹿げた島なんていうシーン、納豆部隊の話は、まさにそこに原点があり、戦争で死ねなかったから、その後の広島に原爆をに繋がって行ったのがよくわかった。AKTの旗揚げに相応しい演目としか言いようがない。
これからの本劇団の発展を期待している。
今週は、昨日のGFORCEのリングリングリング、週末の新幕末純情伝と、つか作品三連発。もう三回忌なんだなと改めて想う。