実演鑑賞
満足度★★★★★
滋企画第3弾は演目がこれ、ただし演出がヌトミック額田大志氏(音楽兼ねる)という事で(音楽はともかく)主宰が何を狙って?起用したのか興味津々、はっきり言えば自作を自己流に制約なく遊んでる印象の額田氏に既存戯曲しかも20世紀のその後の演劇の画期となる作品の一つを、どう任せるのか。かなりの未知数だったが本ユニットへの盲目的な信奉とタイトルで「今週の一押し」と劇場を訪ねた。
「ガラスの動物園」は数年前まで全く未見だったのだが、イザベル・ユペール出演の仏製舞台と、渡辺えり演出と舞台と中々贅沢な座組を観ての三度目。一度目のは字幕を追っての観劇ゆえ細部に目が届かないためか、意外にオーソドックスな印象、二度目のは音楽の生演奏が入った趣向性の高い演出、そして今回は・・・たっぷり2時間45分、手の痛くなる拍手を送る内容であった。拍手はなぜするのだろう。どこから始まった文化だろう・・とふと考える。称賛を伝える目的で「音を出す」表現であるから、手のみならず(オーケストラがよくやるように)足でどんどんやるのも良いだろうし、指笛や掛け声もある。だから何だという話だが、拍手をした事をもって何かを証明する事にはならない事は「判っている」とやんわり釈明した以上の事ではなかった(失敬)。
音楽が命のクリエイターによる演出では、音楽が非常に控えめに感じられたのは良かった。劇伴に徹した作りは国広和毅氏ばりの「目立たない」が「芝居に寄り添った」もので、氏の演出共々見直した次第。
佐藤滋氏がまず登場して観客に語る。マジックを披露・・そうだった。戯曲の指定通り。うまくいった。二つ目のそれは、笑わせる。だが彼が既にトムとして登場した風情から物語の世界に引き込むその引力にまず感服、情緒を掻き立てられる。原田つむぎのローラらしさ、そしてアマンダ役の西田夏奈子がMVP(アマンダとはそうした役柄でもあるが)。後半この家族を訪れる客であるジム役・大石将弘は彼と判別できず後で確認(大石氏というのは顔を思い出させない役者。何度も見てるはずなのだが..)。彼と、ローラとの二人の対面の時間が、この戯曲に清新さを与えているが、既に成り行きを知る身にはスリリング、心穏やかには見られない。だがごく自然な因果に沿った互いの行為が観る者に物事の必然を受け止めるよう静かに丁寧に促す。
すみだパークシアターを奥まで使い、正面の搬出口を玄関に用いる広さがまた、アメリカであった。
見慣れた向きからは一言あるかも知らないが、私には申し分なく劇世界に浸る時間が愛おしかった(ガラスの動物園とはそういった作品でもあるが)。
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2025/03/31 (月) 14:00
翻訳:小田島恒志 演出/音楽:額田大志(ヌトミック)
佐藤滋推しです。故に以下、バイアスがかかっています
あっ、ヌトミックも大いに好みです。以下、バイアスが 2倍になっています
素晴らしかった!笑
いや、最後近くでは泣いていた
戯曲は未読、上演を観るのは今日が初めて
Intermission前は説明的な部分ということと受け取れた。西田アマンダの切れと、夢は持っているけどいやいや滋トム、原田ローラの薄幸さを位置付ける。ここでそれぞれの俳優の技量、技が。佐藤滋は前説から佐藤滋の人柄が満載。姿が良い、手がデカい。そして、高く広い、すみだパークシアター倉に舞台美術の映えること。遠近を強調した床。その床/壁を這い、伸びて縮む陰と光
後半はそら惚れるやろ大石将弘ジムが良い。正直、彼のカウンセリングで身構えてしまうローラがほどけて行く、人と人が向き合うシーンに涙が。そう見せる演技が凄い
戯曲にそうあるのか、滋トムが霊としてそこに在るが如く居る、その気持ちにも心を動かされた
最後のシーンで蝋燭の焔を吹き消すシーンも良かった。これも戯曲にあるのだろうか
大石将弘さんと原田つむぎさんの二人のシーンでの原田つむぎさん舞台真ん中で正面を向いておられる時の表情が凄かった。最前列で見たので見れたのかも知れない
額田さんの音楽、岩城保さんの照明、これは良いのは観る前から判っていた。で、上演を見て、そうだった。闇と陰を操り、壁に影を切り取る光、息を呑む見入る観客。最前列だけど背中でそれが判った。あと蓄音機のジリジリ
ガラスの動物園を読んでみたくなった
滋企画のこの上演が『ガラスの動物園』の個人的な原器となる訳だ
実演鑑賞
満足度★★★★★
どの俳優も素晴らしいが、特に女優二人は秀逸。演出もよく工夫され、細部に至るまで考え抜かれていると感じられる。すみだパークシアターの舞台を目一杯広く使って奥行きや横の広がりを効果的に使っている。
実演鑑賞
満足度★★★★
『ガラスの動物園』についてはよく考えることがある。テネシー・ウィリアムズは何を描きたかったのか、果たして自分は何を観たかったのか?いろいろ妄想するのだが正解は見えない。それ故にまた観てしまう類。
今作は素晴らしかった。超満員の詰め掛けた観客。知ってる役者が結構観に来てた。何でこんなに人気あるの?と不思議に思う程。
一つは徹底的に戯曲を溶かした。10分の休憩込みで二幕2時間45分。そんなに長い話か?と思ったが徹底的に煮詰めている。もうこれ以上ない程考え尽くしやり尽くしている。ありとあらゆる方法論を探って行き着いたキャラクター。もうこれしか選択肢はない。納得のいく『ガラスの動物園』。しかもまた更に別のアプローチで観てみたいとも思わせる。行間の空白に広がる無限の可能性を垣間見せた。
母アマンダ、西田夏奈子さん。饒舌でヒステリックで強圧的、自己顕示欲の塊で常に自意識過剰の躁状態、病的に過去の栄光に縋り続ける。憎むべき侮蔑するべき母を西田夏奈子さんは愛すべき人物に仕立てた。名女優・望月優子のような人の痛みを知る弱き者に。アマンダの新しい息吹。
姉ローラ、原田つむぎさん。文句なし、これぞローラ。すっぴんの一幕、メイクした二幕。今作を観た若い奴にとって一生胸の奥底に貼り付く心の疵となろう。クライマックスの表情が物凄い。一幅の宗教画のよう。
主人公トム、佐藤滋氏。今回の趣向の一つに主人公が自分の心の中の情景を演劇として観客に見せているという額縁構造がある。その為、語り手として説明しながら照明や曲出しに合図を送る。この舞台が彼の心の中の光景だと伝える。MVPはそれを見事に担当した照明の岩城保氏だろう。クライマックスの照明は語り継がれる程。
主人公の勤める靴倉庫の同僚ジム、大石将弘氏。弁論部出身ということで石丸伸二っぽいアプローチ。成程そうきたか。
ユングの提唱した元型(アーキタイプ)。人類に共通する心の中にある記憶の象徴。各人の経験を越え人類が普遍的に備えているとされる感覚。今作がこれだけ繰り返し上演され繰り返し観劇される理由はそこに触れているからだと思う。誰か徹底的に論じて本にしてくれ。
曲で例えるとPearl Jamの「Off He Goes」みたいな感触。
是非観に行って頂きたい。