きみはともだち 公演情報 きみはともだち」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.8
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  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    自分は二回観て、ようやくわかりました。たぶん歳のせいなのと、最近は二回観てようやくわかることに慣れてしまったのかもしれないな。

    もちろん一度観て『分かった!』と思ったけど、試しにもう一度観て、この前のは全然分かってなかったな、もう一度観て良かった、ということが多い。これは脚本買って読むのとはまた違う経験だ。

    まず他の人も書いているけど、このタイトルのともだちって、誰なんかな、というのを思う。これは登場人物全部当てはまるし、場合によっては物語の舞台の上にはでてこないもう一人の人というのも思い浮かぶ(そっちのほうが素敵なのかもしれない)。舞台の上にでてこない人の傷を思って想像できる心の優しさを持てるのかどうか。それがともだちの概念なのかもしれない。会ったことはないけど、『きみ』が傷ついたのをみて傷ついた人を見、きみの心の傷が想像できたから、きみはもう『ともだち』だよ、と思えたなら、舞台の上の人たちすべてがその人の『ともだち』なのだ、とも思う。それは家族でも恋人でも、きょうはじめて会ったばかりの人でも、みんなが『きょうはあの人のこと会ったことはないけれど想像できたから、みんなともだちだったね』となるのだ、とも思う。

    こんなこと書くと、何甘いこと言ってるんだよ、とか言われそうだけど、まさにそうなんだ。自分がこんな甘いことを平気でスラっと書けるのも、『ともだち』がいるからなのだ。

    世の中には超攻撃で、恐怖に駆り立てられて暴走し続ける人たちもいる。そのような人たちには、会社のお金を使って、利用できる価値のある人間かどうかを見極めて酒の席などに人を頼って割って侵入して仲間を増やすことしか考えられない人たちというのも存在する。そして横領して虚偽の報告書を作って自爆してクビになる、そんな人たちを大勢みてきた。登場人物の男性は、ひょっとしたらそんな人たちに今も囲まれてるのかもしれない。だとしたら可哀想だな、とか思う。

    このような人たちには『ともだち』はいない。タダ酒でいい気にさせて利用することしか考えていない人たち。そんなのを僕は山ほどみてきた。そういう気持ちの悪さに意識できるかどうか、拒否反応を示して、なんかこいつ違うっぽい、と思えるかどうか、が正念場だとも思う。

    割と社会的信用のある人たちはそんな人たち山ほどみてるからすぐわかるけど、社会に出てすぐの若者たちは見慣れてないから、戸惑ってしまう。

    そこらあたりで『ともだち』かどうかが分かれてくる。会社のお金に取り込まれてしまう人、優しさを失わずに嘘を見抜ける感じの人たち。…そんなに気にする必要はないよ、とも思うけど、繊細だと気持ちの悪くなる。そうしたことにも気づかえるのか、社会に出てもひょっとしてマイナスになることしかなさそうだけど、たぶん、そんな能力。モヘー氏かっこいい♪

    でもみんな小芝居を続けて演じてるんだ。悪いことをしていなくても、しなければならない小芝居の連続が、人生、なのかもな。

    権力も人生にも限りがある、から小芝居もときには必要。悪いことしてなくても。繊細じゃない人に使える優しさはも有限だしな。
    (もう少し書きたす)

  • 実演鑑賞

    観終わったあと、祈るように、刻むようにタイトルをなぞった。
    「きみ」と「わたし」がちがったままともだちでいられる方法を、世界を、誰でもないきみとわたしでつくらなくてはならない。互いを損なわず、すり減らさず、手を取り合うこと。その果てしなさに目眩を覚えるけれど、本当にそれしかないのだと思う。
    分かりやすいジョーカーをつくるのではなく、異なる立場や属性、対岸に立つ人間の苦しみや怒りをも描き、いくつもの角度と視座から「間違い」ではなく「違い」を照射するこの演劇は、真摯に何度もそのことを伝えていたように思う。いや、果てとチークの演劇はいつだってそうなのだと改めて痛感する。つたわらない/わかりあえない/通じ合えないかもしれない恐怖を背負いながら、舞台と客席を横断して辛抱強く対話を試みている。
    しかし当然ながらその辛抱を誰かだけに背負わせてはならない。わたしにはなにができるだろうか。
    悪者を一人つくって、そこを叩くことによって「正しさ」を叫ぶことの方がきっとずっと簡単で、安心もできる。それは社会にも演劇にも言えることだけど、その果てにホープはあるだろうか。そう問われている気がした。

    後半ずっと涙を流しながら観たのだけど、その涙には確実に無自覚さや独り善がりやその他さまざまな自分の暴力性も配合されていて、それを知らされる演劇であるにも関わらず安全な居場所で泣いている自分にそれこそ冷や水をかけたくなったりもした。全ての人物に少しずつ自分がいた。感情が昂る度にそのことにはたと気付かされた。それは情けなくもとても大きな気づきだった。

    升味さんの劇作はさることながら俳優も本当に素晴らしい。
    川村さんの明るさの中で揺れる怒りと祈り、モヘーさんの戸惑いながらもなんとか言葉にして伝えようとする時のリアリティ、横手さんの有害な男らしさを遠ざけながら一体となってしまう絶望の佇まい、そして、諦めから踵を返して叫ぶ升味さんの瞳。さらに、このような喫緊のシリアスな題材でも、いやだからこそ、演劇的な仕掛けや人々のユーモアや可笑しみ、親しみある言葉づかいによって舞台上の空気を緩和させたり、温度をあげたりすることを同時に成し遂げていることの凄さ。演劇に不慣れな人も飽きずに見届けられる風景に変換することは技量であり同時に寄り添いなのだと痛感する。そして、寄り添わせてばかりいてはならない、ともやはり痛感する。
    だからやっぱり「きみ」と「わたし」がちがったままともだちでいられる方法を世界をわたしたちでつくっていくしかない。ちがったまま手をのばし、取り合うというホープをなんとか信じて。
    (この喫緊の題材と作品から得たものの体感と「満足の度合いをつける」という行為が自分の中で折り合いがつけられないので、満足度は空きとさせていただきますが、演劇の持つ力、観られてよかったと心の底から思う気持ちの点では迷うことのない星5です。)

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    前日譚にあたる『はやくぜんぶおわってしまえ』の初演は観ておりますが、観て無くても問題なしです。
    美術やミザンス、役者の選択、演技の真摯さ、どれも良かったし、ドラマも面白かった。
    テーマに前のめりになりすぎてないなら、こちらやっぱり見応えあって、今回は良いバランス感覚でした。

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    鑑賞日2025/01/19 (日) 13:00

    れぞれが考えていることは、お互い判らないけど、しかし、彼らの関係は題名通り「きみはともだち」だ。でも判り合っている訳ではない。でも知ろうとすること、相手の立場の理解を深めることは出来る。まあ、そんなに簡単ではないけど、少なくとも相手を思いやる気持ちは持てるかも知れない。それはどんな立場に居る相手であれ、あるいは己であれだ。普段、演劇に教訓を求めることはしないけど、この作品が訴えかけるモノを受け取り、それを意識し続けることが大事だと思う。
    戯曲の構成/80分での展開の巧みさ、川村瑞樹/升味加耀/松森モヘー/横手慎太郎、4人の人物像と、それぞれ違う立場で違う痛み持つ、それを表す演技と申し分ない。特に升味さんの負荷は凄いものだと思うが、舞台美術もこれまでと違う具体的な創り込み、トータルで素晴らしい上演だった。

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    鑑賞日2025/01/17 (金) 14:30

    去年8月上演の『はやくぜんぶおわってしまえ』の10年後の位置付け
    「どうしたら あんたと ともだちのままでいられるかな」パンフレットのあらすじの冒頭に書いてある。
    友達でなくなった前作での二人がまた撚りを戻して友達でいる。
    ジェンダー上のマイノリティーの野澤と登場しないけどその相手、その幼馴染のマジョリティーの高校の同級生の園と彼、正職に就いてない男、の4人(5人)。ある意味今の世の中の縮図と言うと乱暴だけど、そこにマイノリティーの生きづらさを投影させる。わかり合えない、それってよほどの関係でないと、いや、相手がなにを考えているのかって友達同士でも判らないと思う。それはそうだと思う。
    升味加耀の俳優としてのしたたかさが凄い。

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    女子校の教室を舞台にした『はやくぜんぶおわってしまえ』の続編にあたり、前作より10年後の世界を描いている。この団体の強い問題意識が反映された前作、そして続編であり、性的マイノリティとの向き合い方、これからどう思考を続けていくべきか? など、観劇後の観客が考えるべきことは多い。今作の創作は心身への負荷が容易に想像できるため、創作に関わった皆さんには、どうかご自愛して欲しい。

    ネタバレBOX

    テーマのひとつに「人間関係の分かり合えなさ」があると思うが、人間が生きていると、何度かこの絶望に打ちのめされる。何度か、ならマシかもしれず、何十、何百と経験する人もいるだろう。この絶望を、極めてドライに、客観的に、描いているシーンが複数あり、客席から観ると痛々しいとすら思える描写に、団体が演劇表現と向き合う「本気度」を感じる。この本気度も、上演作品や団体の特徴のひとつと言えます。

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