ドードーが落下する 公演情報 ドードーが落下する」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 3.3
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  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    鑑賞日2025/01/18 (土) 14:00

    主人公の不安定さとともにシームレスに綴られる物語は、彼と周囲と人々とのやり取りをある種の緊張を湛えながら描いていく。やるせない優しさとすれ違い。言葉にするにはナイーヴ過ぎる感情。この舞台を観に行けてよかった。

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    まるで平原テツ氏の独り芝居のよう。L字型の2面の壁に囲まれた部屋。6本の蛍光灯が天井から吊るされている。それが時折点滅すると場転の合図。壁の上に寝そべった出演者達が舞台を上から覗き込んでいる。ロマン・ポランスキーの『テナント』みたいな被害妄想と強迫観念の構図。幻聴幻覚が自分の体内から滲み出てくる。かなり演出に凝って変えているので同じ戯曲の別ヴァージョンみたいな感じ。

    今回観て気付いたのが安川まりさんが場のキーパーソンであること。要所要所で重しになっている。

    初演時のイベント制作、藤原季節氏の役が秋元龍太朗氏になっている。ピン芸人秋元龍太朗氏の役は鈴木勝大氏に。バイトリーダー山脇辰哉氏の役が諫早幸作氏に。
    前回は平原テツ氏の相方が登場しなかったと思う。今回はかなり重要な存在(金子岳憲氏)に。

    ネタバレBOX

    初演の方が自分は好き。藤原季節氏が売れないお笑い芸人との妙な友人関係を抱きしめる物語だった。面倒臭い精神病持ち、意味不明な事件ばかり起こし、皆が当然見捨てるであろう男に何故か感じる気持ち。人は皆生きてく上で、沢山の人間関係を切り捨て沢山の人間関係から切り捨てられてゆく。そのどちら側であっても発する痛み。キチガイの売れない芸人のことを何故だか大切に思う自分。何故か切り捨てられない。ラストは芸人の最新ギャグを一緒にやってやる。
    「タランティーノだけが受けるギャグ」
    愛する夫が病院で到頭亡くなる。狂乱し泣き叫ぶ妻。突然扉が開いて「ハッピー・バースデー・トゥー・ユー」と場違いなケーキが運ばれて来る。

    前回はこれがラスト。今回はそもそも平原テツ氏の病室(?)で秋元龍太朗氏と金子岳憲氏の声だけが壁から聴こえてくる。全てが彼の妄想のようだ。ソファーの隙間からザワザワと何かが這い出してくる。枕の中身のビーズのような。(初め虫かと思って驚いた)。
    このギャグの後に金子岳憲氏が部屋にやって来る。平原テツ氏は元相方に最新ネタを披露する。「原始時代のマッチング・アプリ」。これは毎回アドリブなのかも知れない。

    平原テツ氏の視点で世界を構築してみたが中途半端な出来。「神経症はヘルペスのように空気感染する」という筒井康隆のネタがあったが、キチガイの感じる世界に観客を取り込まないと物足りない。そもそも平原テツ氏のいる世界では皆が書き割りのようにペラッペラでないと。その無機質の世界に在るあたたかな温もり。これは一体何なんだ?

    バイトリーダー諫早幸作氏の出番がなかなかなく、ずっと壁上から皆を眺めている様子が面白かった。このまま最後まで出番なく、「彼は一体何だったんだ?」の方が良かった。
  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    ネタバレ

    ネタバレBOX

    劇団た組『ドードーが落下する』を観劇。

    岸田戯曲賞作品

    あらすじ:お笑い芸人・夏目は相方と日々ネタ合わせを行なっているが、思うように芸人として歩めていないようだ。相方・賢も介護士の資格を取り、将来の先行きを悩んでいる。
    そんな中、夏目に神から声が届くようになり、現実と妄想の世界を彷徨ってしまうのであった…。

    感想:統合失調症を抱えながら生きていく辛さと彼に関わる友人、知人、家族との軋轢が描かれている。周りには理解されないと知りながら、ひた隠しに生きていく夏目。知らず知らずのうちに周りに迷惑をかけ、彼の行動は仕方ないと理解しつつ、登場人物と観客は落ち着かない。 時間軸が現在から近い過去へ行ったり来たりする手法は過去作でも行なっているが、あまり意味がないようだ。 他者との関わりの居心地の悪さを終始感じさせる展開は気分が悪く、終着点を見出したいが、それすら見えない終わりに向かっている。 ラストで夏目の妄想と現実の狭間いる平原テツの芝居は圧巻で、生々しくて恐怖すら感じてしまう。これを真に感じることが今作の描きたかったこのなのだろうか? 演劇を生で観ることの喜びすら感じる瞬間でもあったのだ。

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